「いきり」の政治に騙されてはいけない

武田砂鉄 / Satetsu Takeda News

「いきり」の政治に騙されてはいけない
ドナルド・トランプ政治家選挙
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ライターの武田砂鉄が新刊『「いきり」の構造』を刊行。とにかく声が大きく、なぜか自信満々な為政者による暴走に警鐘を鳴らす。

『「いきり」の構造』と題した本を刊行した。コラム集ではなく、1つのテーマで丸ごと書き上げたのは久しぶりだ。本の帯に「どうしてあんなに、自信満々なのか。」と書いた。この数年、テレビを見ながら、SNSを眺めながら、そこに登場する人に対してこう感じる機会があまりにも多い。おそらく皆さんも同じだと思う。対象は異なるかもしれないが、感覚は共有できるはず。2年間ほど雑誌に連載していたが、次に書く内容をどうしようかと悩む前に、「いきっている」存在が新たに登場し続けた。 ここ最近の国政選挙を思い出せば、オールドメディア批判に励むためにキャスターなどからの問いに答えずに嘲笑することで喝采を浴びた人がいたし、選挙カーの上から罵詈雑言を吐きまくり「二馬力選挙」を展開した人がいたし、外国人差別を乱発しながら受け取る側の問題に転嫁してうねりを作り出した政党があった。それぞれ時間が経過すると勢いは弱まるのだが、その勢いの最中にいたずらに傷つけられた人がいたこと、場合によっては命を断つ人がいたことを忘れてはいけない。無責任な言いっ放しには、ずっと責任がある。 これまで、自信満々な人、とりわけメディアに露出している自信満々な人というのは、その自信に一定の裏付けがあった。経験なのか知識なのか、たとえそれが偏っていたとしても、話者を支えるものがあった。議論が巻き起こるならば、賛成している人と反対している人が根ざしているものの差異によって議論が展開していった。 ところが、今起きていることは、裏付けがないくせになぜか自信満々なのだ。アメリカの ドナルド・トランプ 大統領が顕著なように、フェイクを垂れ流し、フェイクではないかと指摘すると、不機嫌になった彼が「フェイクニュース」と名指ししながら批判する。この流れに慣れてしまったが、あれは要するにフェイクとの指摘に対するファクトが欠けている状態。ところが支持者の多くは、指摘をひっくり返してくれる弁論を彼に期待するのではなく、そんな指摘をされても更に強引な所作を繰り返す様子に興奮している。 とにかく、「言いたいことも言えない世の中で、それでも自分はハッキリ言うよ」と前のめりになる存在がもてはやされる。なぜそう言えるのか、そう言うための論拠はどこにあるのか、その発言によって差別構造が強化される可能性はないのか。こういった複数の問いを放置して、「それでも言い続ける自分」をプレゼンテーションする。 私はSNSでは人とやりとりしないようにしている。今、SNSで「強い」とされている人って、「それでも言い続ける人」だ。どれだけ有機的な問いや根本的な問題視をぶつけても、「自分が勝ったことにすると開き直っている人」に熱狂が集まってしまう。本書を書いている時に出合った一冊が、酒井隆史による『賢人と奴隷とバカ』で、「近年の知的言説」について、「みずからの思考の限界を問うことなく、否定した他者に『思考の欠落』を押しつけているのではないか」と書いている。 この酒井の指摘はあれこれの状態に該当する。さらに言うならば、思考を俎上に載せず、数値の議論に移行させ、自分の言動にはこれだけの人が賛同しているけど、オマエはどうなのだ、と単純比較する。思考を限界まで探り合うのが議論だが、思考が問われないように逃げ回ってみせる。選挙にしても、その政党が何を考えているかではなく、どのように届けたのか、そのテクニックの話ばかりになってしまう。 前回の参議院選挙、与党ならば公明党、野党ならば共産党といった、長い歴史を持つ政党が伸び悩んだが、では、次にどうするかとなれば、すぐにSNS戦略をどうしたらいいのかと考え始める。もちろんそれも大切だが、紆余曲折あろうが、ここまで土台を保ってきた政党が浮つくと、政治はますます「言ったもん勝ち」になる。 メディアも「届け方」の話ばかりする。選挙のたびに、最新の届け方が注目され、瞬間風速で話題になる人・組織が出てくる。朝のワイドショーがトレンドを紹介し続けるのは番組の性質上仕方ないが、政治の世界までそうなっている。 政治家 が作るべきは生活の安定であり、トレンドではない。これでは「いきり」が力を持ち続けてしまう。 まずは自信満々に言ってみる。厳しい指摘をされても、それでもなお自信満々を続ける。厳しい指摘を乗り越えたわけではないのだが、乗り越えたと勘違いする人が出てくる。この構造にいい加減気づきたい。そして、簡単に乗せられないようにしたい。 武田砂鉄 ライター 1982年生まれ、東京都出身。 出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年では、ラジオパーソナリティーもつとめている。『紋切型社会─言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、のちに新潮文庫) で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。著書に『べつに怒ってない』(筑摩書房)、『父ではありませんが』(集英社)、『なんかいやな感じ』(講談社)、『テレビ磁石』(光文社)などがある。9月5日に新刊『「いきり」の構造』(朝日新聞出版)を刊行した。 文・武田砂鉄 編集・神谷 晃 AKIRA KAMIYA(GQ).

『「いきり」の構造』と題した本を刊行した。コラム集ではなく、1つのテーマで丸ごと書き上げたのは久しぶりだ。本の帯に「どうしてあんなに、自信満々なのか。」と書いた。この数年、テレビを見ながら、SNSを眺めながら、そこに登場する人に対してこう感じる機会があまりにも多い。おそらく皆さんも同じだと思う。対象は異なるかもしれないが、感覚は共有できるはず。2年間ほど雑誌に連載していたが、次に書く内容をどうしようかと悩む前に、「いきっている」存在が新たに登場し続けた。 ここ最近の国政選挙を思い出せば、オールドメディア批判に励むためにキャスターなどからの問いに答えずに嘲笑することで喝采を浴びた人がいたし、選挙カーの上から罵詈雑言を吐きまくり「二馬力選挙」を展開した人がいたし、外国人差別を乱発しながら受け取る側の問題に転嫁してうねりを作り出した政党があった。それぞれ時間が経過すると勢いは弱まるのだが、その勢いの最中にいたずらに傷つけられた人がいたこと、場合によっては命を断つ人がいたことを忘れてはいけない。無責任な言いっ放しには、ずっと責任がある。 これまで、自信満々な人、とりわけメディアに露出している自信満々な人というのは、その自信に一定の裏付けがあった。経験なのか知識なのか、たとえそれが偏っていたとしても、話者を支えるものがあった。議論が巻き起こるならば、賛成している人と反対している人が根ざしているものの差異によって議論が展開していった。 ところが、今起きていることは、裏付けがないくせになぜか自信満々なのだ。アメリカのドナルド・トランプ大統領が顕著なように、フェイクを垂れ流し、フェイクではないかと指摘すると、不機嫌になった彼が「フェイクニュース」と名指ししながら批判する。この流れに慣れてしまったが、あれは要するにフェイクとの指摘に対するファクトが欠けている状態。ところが支持者の多くは、指摘をひっくり返してくれる弁論を彼に期待するのではなく、そんな指摘をされても更に強引な所作を繰り返す様子に興奮している。 とにかく、「言いたいことも言えない世の中で、それでも自分はハッキリ言うよ」と前のめりになる存在がもてはやされる。なぜそう言えるのか、そう言うための論拠はどこにあるのか、その発言によって差別構造が強化される可能性はないのか。こういった複数の問いを放置して、「それでも言い続ける自分」をプレゼンテーションする。 私はSNSでは人とやりとりしないようにしている。今、SNSで「強い」とされている人って、「それでも言い続ける人」だ。どれだけ有機的な問いや根本的な問題視をぶつけても、「自分が勝ったことにすると開き直っている人」に熱狂が集まってしまう。本書を書いている時に出合った一冊が、酒井隆史による『賢人と奴隷とバカ』で、「近年の知的言説」について、「みずからの思考の限界を問うことなく、否定した他者に『思考の欠落』を押しつけているのではないか」と書いている。 この酒井の指摘はあれこれの状態に該当する。さらに言うならば、思考を俎上に載せず、数値の議論に移行させ、自分の言動にはこれだけの人が賛同しているけど、オマエはどうなのだ、と単純比較する。思考を限界まで探り合うのが議論だが、思考が問われないように逃げ回ってみせる。選挙にしても、その政党が何を考えているかではなく、どのように届けたのか、そのテクニックの話ばかりになってしまう。 前回の参議院選挙、与党ならば公明党、野党ならば共産党といった、長い歴史を持つ政党が伸び悩んだが、では、次にどうするかとなれば、すぐにSNS戦略をどうしたらいいのかと考え始める。もちろんそれも大切だが、紆余曲折あろうが、ここまで土台を保ってきた政党が浮つくと、政治はますます「言ったもん勝ち」になる。 メディアも「届け方」の話ばかりする。選挙のたびに、最新の届け方が注目され、瞬間風速で話題になる人・組織が出てくる。朝のワイドショーがトレンドを紹介し続けるのは番組の性質上仕方ないが、政治の世界までそうなっている。政治家が作るべきは生活の安定であり、トレンドではない。これでは「いきり」が力を持ち続けてしまう。 まずは自信満々に言ってみる。厳しい指摘をされても、それでもなお自信満々を続ける。厳しい指摘を乗り越えたわけではないのだが、乗り越えたと勘違いする人が出てくる。この構造にいい加減気づきたい。そして、簡単に乗せられないようにしたい。 武田砂鉄 ライター 1982年生まれ、東京都出身。 出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年では、ラジオパーソナリティーもつとめている。『紋切型社会─言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、のちに新潮文庫) で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。著書に『べつに怒ってない』(筑摩書房)、『父ではありませんが』(集英社)、『なんかいやな感じ』(講談社)、『テレビ磁石』(光文社)などがある。9月5日に新刊『「いきり」の構造』(朝日新聞出版)を刊行した。 文・武田砂鉄 編集・神谷 晃 AKIRA KAMIYA(GQ)

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