トヨタ「液体水素カローラ」、電気抵抗ゼロの超電導モーター導入 京都大学の超電導モーターの仕組みを紹介

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トヨタ「液体水素カローラ」、電気抵抗ゼロの超電導モーター導入 京都大学の超電導モーターの仕組みを紹介
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スーパー耐久最終戦富士で公開されたトヨタの超電導技術採用の液体水素カローラが大きな話題となっている。トヨタは2021年4月23日に水素を燃焼させて走行する水素エンジン(H2ICE[Hydrogen 2 Internal Combustion...

理論的には、気体水素に対して-253℃の液体水素は体積が1/800になる。しかしながら、70MPaの高圧気体水素は体積が圧縮されており、液体水素とすることでの搭載量は理論的に1.7倍。燃料タンクには魔法瓶方式の真空二重槽が必要となることから、そのままでは若干の改善にとどまる。 しかしながら、高圧の気体水素では円柱形状が必要であったのに対し、常圧の液体水素では燃料タンクの自由度を高めることができる。実際、 トヨタ は燃料タンクを楕円化することで容量をアップ。高圧気体水素が7.

3kgであったのに対し、常圧液体水素円柱タンクが10kg、常圧液体水素楕円柱タンクが15kgと、水素燃料搭載量を倍増している。 この液体水素化によって必要となった部品モジュールが燃料ポンプとなる。液体のガソリンを扱うガソリン車にも装備されている枯れた技術であるが、液体水素カローラでは直噴エンジンへ向けての昇圧もこのポンプで行なっている。そのためトヨタの車載液体水素システムでの名前は「液化水素昇圧ポンプ」となっている。 このポンプは液体水素の場合においては-253℃の極低温化で、さらに油脂類は一切使えない状況下での動作が必要になる。そのため、ポンプの寿命が圧倒的に短くなり、初期の液体水素カローラでは3時間ほどとなっていた。そのため、24時間レースではポンプ交換が発生。その際には、液体水素を燃料タンクから抜いておく必要があるため、(ポンプもでかいし)とても簡単なものではなかった。今回、超電導モーターが採用されたのは、この電動ポンプ部になる。前提条件としては、-253℃という極低温環境がタンク内にあることというのがあり、電動ポンプを液体水素づけにすることで、電気抵抗ゼロという超電導がおきる条件がそろう。 超伝導現象は極低温環境下でおきる現象で、電気抵抗ゼロのほか、磁力線遮断のマイスナー効果もおこり、そのため強力な磁力が必要なMRI(Magnetic Resonance Imaging、磁気共鳴画像法)でも利用されている。現在試験が進むJR東海のリニアモーターカーでも使われており、富士スピードウェイ帰りの三島駅でも超伝導現象を説明する映像が流れている。 絶対零度は分子運動の止まる温度として知られており、-273.15℃(0K[ケルビン])。当初、超電導現象は液体ヘリウムの温度である-269℃の環境下で観測され、さまざまな研究が進んだ。その一つに超電導現象がおきる温度をなるべく上げるというものがあり、現在は液体窒素の温度である-196℃でも超電導現象がおきる物質が実用化されている。 であるなら、-253℃の液体水素の環境下では超電導モーターの導入はトヨタの視野に当初から入っており、2024年の富士24時間では超電導モーター技術のパネル展示が行なわれていた。京都大学、東京大学、早稲田大学とそれぞれ共同研究を行なっており、今回のスーパー耐久最終戦富士では、どのような超電導モーターが導入されるのかが気にはなっていた。搭載方法は、液体水素燃料タンク内部に落とし込む方式で、液体水素燃料が走行によって減ってきても、なるべく影響の小さい底部に配置されている。実際の配置状況を見ることはできなかったが、トヨタ 水素エンジンプロジェクト統括 主査 伊東直昭氏によると、「この辺りです」と液体水素燃料タンク外装下部を指し示してくれた。しかし、リアハッチをあけるとこんな具合に、なんだか分からない機械が山積みになっている。左上が水素充填コネクタ、右のパイプがボイルオフ用ガイド、そして各種の水素配管トヨタ自動車株式会社 水素エンジンプロジェクト統括 主査 伊東直昭氏。水素車両開発を主導する。GRカートも伊東さんが開発担当 トヨタは加圧ポンプの方式にピストン式を採用している。これは、トヨタはピストン式の内燃機関を内製する(ほとんどの自動車用内燃機関はピストン式)メーカーであり、シリンダーやピストン、ピストンリングに関するノウハウを多く持っているためだろう。油脂類を一切使わないという極端な環境下(かつ極低温による、素材収縮もある)では、どれだけ技術を開発していけるかがポイントとなるため、まずはピストン式から手を付けたものと思われる。 そのため、トヨタが公開した液体水素内の超電導モーター配置図では、超電導モーター下部にピストンポンプが配置されているなど、液体水素の送り出しには有利だが、超電導環境を維持する燃料の液面変化に不利な構造となっていた。この辺りは、どの形が有利なのか、どの配置が有利なのか、液体水素づけにするのに適した形や形式が探られていくものと思われる。中村武恒教授は、京都大学が開発した超電導モーターは、シンプルな点が特長だという。超電動モーターの効率も99.5%超あり、わずか0.3秒で所定の同期回転数に達する。さらに出力も3.7kWのものが超電導環境下では41kW超と10倍以上の出力を発生する。コンパクトな外形のモーターが、通常の10倍以上の出力を発生していることになる。 また、フェールセーフ性にも優れるという。超電導モーターでは、電気抵抗が極端に低いため、通常の環境下では流せない量の電流が流れている。超電導環境が崩れた際も、出力が下がるだけだという。つまり、前述の例で言えば、41kW超と10倍以上の出力を出していた超電導モーターは、超電導環境が崩れた場合想定を超える電流によって破壊されるのではなく3.7kWのモーターとして動くという。非超電導状態下でも動くモーターとなっている。 中村武恒教授はさまざまなグラフで、京都大学が開発した超電導モーターの優れた特性を示してくれたが、実はこれは液体窒素の環境下(-196℃)で計測した特性だという。「(-253℃の)液体水素だと、もっと特性がよいですよ」と語り、液体水素カローラが持つ優れた低温環境がうれしい様子。以前、中村武恒教授と富士スピードウェイでお話した際は、「研究室で開発した技術の出口があるのがうれしい」と語っており、研究室レベルで磨き上げてきたものが、多くの車両に採用される可能性が見えてきたことを歓迎していた。 今回、超電導モーター搭載の水素カローラはレースを走らず、報道陣向けにテストランを見せたのみに終わった。この理由として中村武恒教授は、水素カローラではスロットル状態によってモーターの回転数を頻繁に変化するため、その辺りの配線強度対応を行なっている最中だという。航空機のような一定回転での使用は問題ないが、小型車両である乗用車、ましてレース車両で発生するG(重力加速度)やスロットル変化への信頼性を確保している最中になる。それはそれで実用車に近づいているということで歓迎すべきことだが、外見から見て「おお、すげぇ」と思わせる部分が少なくなっている。この超電導モーター搭載水素カローラのデビューは2026年の富士24時間レースを予定しているが、その際はボディ側面に自発光式で電気抵抗値やモーターの出力、回転数が出るなど、「おお、すげぇ」と思わせることのできる「見える化」を期待したい。

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