「ヒップホップ・ジャパンの時代」Vol.2 ──valknee

連載:ヒップホップ・ジャパンの時代 News

「ヒップホップ・ジャパンの時代」Vol.2 ──valknee
ヒップホップ / HiphopKentaro Takasugi
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日本のヒップホップ・シーンの盛り上がりを伝える短期連載がスタート! 第2回は、オルタナティブなフィメールラッパーのvalknee(バルニー)が登場。気鋭のヒップホップ&カルチャーライターのつやちゃんが、注目アーティストの現在に迫る。

【はじめに】 KANDYTOWNの終演や舐達麻の躍進、BAD HOPの東京ドームのラスト・ライヴと解散、さらに千葉雄喜の始動と新たな若い才能の台頭。そして、ストリートとインターネットの関係の複雑化、ジェンダーの多様化、多種多様なオルタナティヴの開花も進行している。2020年代の折り返し地点を目前に、再び大きな転換点を迎えたかにみえる日本のヒップホップ。そんなシーンの最前線で活躍するアーティストやレジェンド、フェスやその主催者などへの取材を通して、「ヒップホップ・ジャパンの時代」を多角的に検証する短期連載。 valkneeは折れない NYのブロンクスで生まれたその瞬間から、ヒップホップはストリート由来の、声なき者によるカルチャーとして世界中に伝播していった。2024年の日本では、そういったヒップホップのコアを継承しながらもこの国特有の文化的背景を取り入れた、オルタナティブなヒップホップが新たなシーンを形成しつつある。今年の「POP YOURS」でヘッドライナーを務めたTohjiは、まさに象徴的な存在だろう。 2019年にデビューしたvalkneeも、オルタナティブなシーンを代表するラッパーのひとり。ヒップホップが好きな一方でアイドル音楽やインターネットミュージックを好み、自身のナードなルーツを組み合わせることで個性あふれる音楽性を築き上げてきた。ただ、その道は苦難の連続だったという。男性中心かつストリート発の不良性を美徳とする価値観が主流の中で、女性として、文化系としてラッパーの活動を続けていくことの難しさ。しかし、valkneeは折れない。先日ファーストアルバム『Ordinary』をリリースしワンマンライブも成功させた彼女に、今のモードと、シーンに対して考える胸の内を訊いた。 ───valkneeさんは2019年にEP『FIRE BAE』を初めて配信リリースして、5年以上が経ちますね。この5年間で、ヒップホップシーンも大きく変化した印象があります。 たった5年の間に、色んなことが変わりましたね。当時は、今活躍してる人たちもすでにいたんだけれど、まだ区画整理されていない状態で各自が活動を展開していた感じでした。Kamuiもすでにいたし、lil soft tennisやrirugiliyangugiliもいた。SATOHも活動はしていて、自分もイベントに誘ってもらったりしていました。でも、まだ混沌としていて、ヒップホップのメインストリームもオルタナティヴもあまり区別がなかった。 ───女性のラッパーは? なかむらみなみちゃんはすでに活動していて、あとはMarukidoも近いところにいたのかな。Awichが代官山UNITでライブをしていて、普通にまだフロアで皆と写真撮ってる、みたいな頃でした。 ───そんな時代に、valkneeさんは一人で活動を始めてどのような試行錯誤をしていましたか? 私はアイドルとヒップホップが好きなので、デビュー当初は両方の現場に行って少しずつ知り合いができて、という地道なことを繰り返していました。あとは、ツイッター(笑)。それしかなかった。まだ有象無象の様々なスタイルのラッパーが入り混じってて、私もとにかく色んなところに顔を出す感じで。 ───そういった混沌としたシーンの状況が、変わりはじめたなと感じたきっかけはありますか? Tohjiの活躍だと思います。Tohjiがどんどんスケールアップしていくのを見て、皆が「こういうことってできるんだ」って希望を持った。その周りの人──釈迦坊主だったりRalphだったり──も大きくなっていって、それを見てラップに参入する人がすごく増えたし、イベントを打つ人も増えた。 ───イベント「TOKIO SHAMAN」は象徴的でした。 そうですね。あの時のメンツって、今活躍してるスター選手が集っててすごい。今でも2019年頃にBaticaでやってたイベントってネットで調べたら出てきますけど、TohjiとLEXが一緒に出てたりして、「ああ、こういうところから始まったんだよね……」と思うと感慨深くなります。だから、最近(下北沢)SPREADとか(恵比寿)Baticaとか(幡ヶ谷)Forestlimitとかで演ってる子たちも、何かピースが揃えばああいう風に一気に大きくなる可能性はあるんだろうなと思う。 ───先日のvalkneeさんのワンマンライブもまさにそういう勢いを感じました。あの規模感でvalkneeさんのリスナーが可視化されたのは初めてだったと思うんですが、オルタナティヴなヒップホップのリスナーがかなりの数と熱量で増えてきているのを実感しました。 熱かったですよね。オルタナティブなシーンは女性が多いというのが特徴だと思います。それこそAVYSS周辺のイベントとかは男女比がほぼ半々で、たまに女性の方が多かったりもする。文化系っぽい人も多い。でも私は本当にまだまだすべてが探り探りで、今回のアルバム(『Ordinary』)も、歌とラップをどのくらいの比率にするかも含めて悩みながら作っていました。自分ではラップの方が得意だと思ってるしラッパーだと見られたいし、すべて実験の繰り返し。 ───ちょっと時間軸を戻しますが、valkneeさんの転機でいうと、女性ラッパーたちとツイッターで連帯し結成したZoomgalsは大きかったんじゃないでしょうか。今振り返って、あの活動をどのように捉えていますか? 当時は、コロナ禍でTOKYO DRIFT FREESTYLEやラップのバトン企画が流行りはじめて。自分も何か企画したいと思ってたんですよね。最初は、「Zoom」っていう曲をきっかけに話題になればいいかなくらいにしか思ってなかったんだけど、実際やってみたら想定以上の反響だった。zoomgalsの曲って、あのメンバーでは珍しいくらい普通のラップをしてるんですよ。メロディとかほとんど歌ってないし、オルタナティヴな感じを出していない。だからこそヒップホップのメインストリームのリスナーが反応した。自分としては、あれは男性中心のヒップホップに対するカウンターの意味合いで、ヒップホップ然としたことをあえて真似たわけですけどね。私の周りのアーティストの子たちからは、あのラップスタイルは好きじゃないと言われたりしました。でも、世の中へのアピールとしてはああいう正統派のラップの方が理解されやすいんだろうなというのも分かってやっていたので。自分が普段好きで聴いている音楽との乖離は大きかったから、どこかで意識して戻さなきゃと考えていましたね。 ───Zoomgalsの功績は、結果的に、女性同士の連帯という動きを様々なシーンへ波及させた点にあると思います。 確かに、ラップシーンだけじゃなくバンドとかも含めた色んな文化圏で、令和ギャル的な感じで女の子が連帯するムードが生まれたかも。でも、Zoomgalsのメンバーは本当にばらばらで、そもそもマッチョなヒップホップに対するカウンターという見られ方をされるのも嫌だと言っている子もいたし、全員がしっくりきてやっていたわけではないんですよ。だから、あの後は皆がそれぞれ自分の活動に戻っていったわけですけど。 ───その後、valkneeさんも自身の活動に戻って、いかがでしたか? zoomgalsはやっぱり話題にはなったので、そこで出した数字を超えなきゃみたいなプレッシャーは勝手に感じていました。数字もかなり乖離があったし、手探り期間が長かった。そもそもコロナ禍真っ最中であまり動けなかったし、自主企画イベントを打ったり、少しずつ動けていった感じです。 ───そのあたりから、音楽性が変化していきます。まさにこれがやりたかったんだ、というようなオルタナティヴなヒップホップに移っていきました。 2021年くらいですよね。hirihiriくんと出会って、私もハイパーポップ寄りの音楽が好きだったし、振り返ると、元々私はMaltine Recordsなどのオタクなサウンドを好んで聴いてたんですよね。だから100 gecsが出てきた時にも、皆で「これはやばいね」ってなって。 ───ジャンクなものに対する関心、というのがvalkneeさんのルーツにありますよね。 そう。ネットミーム的なものも好きで、ヒット曲そのままよりもそれを改造したやつが好き、みたいな。一方でヒップホップやトラップも大好きだったけど、でも100 gecs以降、その両者がミックスされていったわけじゃないですか。まさか私の好きな二つが融合されるなんて思ってもなかった。そこでhirihiriくんと会ったタイミングで、もっと自分のルーツを掘ってみようということで色々振り返ってたら、アイドル音楽やMaltine Records系のオタクな要素が出てきて、私ってやっぱりこういう音楽性なんだよね、って。 ───時代的にも、valkneeさんの好み的にも、ハイパーなオルタナティヴ・ヒップホップがそこで繋がったということですね。その後のトピックで言うと、2023年にTV番組「ラップスタア誕生」に出演されました。あれこそ、主流を占める王道の価値観とvalkneeさんのオルタナティヴな価値観との狭間で葛藤されたのではないでしょうか。 結局、私は都会出身の文化系の女なんです。出自が違いすぎて、王道のヒップホップからは共感してもらえないわけですよ。それはもう、ひしひしと感じた。違うのは明らかなわけだから、だったら自分ならではの音楽を模索しようという方向にようやく踏ん切りがついた。ようやくやっと、最近になって納得したって感じです。それまでは「私はヒップホップが好きだし、私なりにヒップホップをやってるんだから理解しろよ」って思ってた。ただ、色んな現場に足を運んだり「ラップスタア誕生」に出たりする中で、自分の中で納得する気持ちになっていきました。王道ヒップホップは王道ヒップホップで、その人たちのものだよな、って。私の考えもだいぶ変わった。ラップスタアに出た収穫は、それですね。 ───ただ、ヒップホップのフェスを見ていると、男性は色んなスタイルの人がいますよね。でも女性のラッパーとして本当の意味でヒップホップのメインストリームに入っていけるスタイルというのは、依然としてかなり限られているように思います。 女性はやっぱり、悪そうでヤンキー的なスタイルですよね。それか、ポップなスタイル。それ以外のヒップホップをやっている女性ラッパーもたくさんいるけどメインストリームには入っていけない。「ラップスタア誕生」で今までにない数のたくさんの人に聴いてもらえて、コメントもいっぱいもらうじゃないですか。批判的なコメントをしている人のアカウントとか見てみたんですけど(笑)、なんとなくどんなライフスタイルの人なのか見えてくる。そりゃ違うわなって思いますよね。私はよくわかんない服着て歌ってる意味わかんない人にしか見えないだろうなってつくづく思う。価値観のすべてが違いすぎるというか。 ───valkneeさんはずっと既存のヒップホップと戦ってきて、そうなると「もうヒップホップはいいかな」と考えてラッパーではなくアーティストとしてやっていく方向に切り替える人もいるかと思います。でも、まだラッパーを名乗って、オルタナティヴとは言えヒップホップをやっている。それは、なぜなのでしょう? 恨み。 ───恨み! 恨みというか、意地というか、嫌がらせというか(笑)。ここでやめたら、もう未来永劫、文化系の女性ラッパーは大きいステージに立てないということじゃないですか。それってめちゃくちゃ嫌な世界ですよね。それを変える人間は今いないし、不毛なチャレンジに見えるかもしれないけど、変えることの方がロマンがあると思う。だから、「POP YOURS」にピーナッツくんとPAS TASTAが出て私はすごく希望を感じたんですよ。今までになかったスタイルじゃないですか。 ───次の世代に向けて伝えたいことは? 景気が悪いし、娯楽なり音楽なりに使えるお金もどんどん減ってきてる中で、周りのアーティストも(サブスクで)月間1万人のリスナーに聴いてもらえるかというところですごく苦戦している状況。才能を持った若いアーティストがかなりの数出てきてるけど、やっぱり埋もれちゃってなかなか聴いてもらえないですよね。悲観してしまってもう活動をやめちゃうとか、そういう人も多い。でも私も働きながらラッパーをやってたし、そういうのも含めて、長期で考えてやっていった方がいいと思う。続けていたら人とのつながりで前進することもあるし、やりながら考えていこうよ大丈夫だよ、って伝えたいです。 ───valkneeさんは7/7に、若手のアーティスト/ラッパーを集めたサーキット型イベント「Crash Summer」も主宰・企画していますね。 5年前にLEXもTohjiもBaticaでやってたんだ、という話をしましたけど、このイベントもそういったものにしたいです。ヒップホップから派生した色んな音楽性のアーティストを観ることができるし何年か後に大きくなってる人たちばかりだと思うので、ぜひ遊びに来てほしい! valknee 2019年にキャリアをスタート。ラッパーの田島ハルコ、なみちえ、ASOBOiSM、Marukido、あっこゴリラと、Zoomgalsとしての活動や、「ラップスタア誕生2023」への出演、他アーティストへの楽曲提供や映画の劇伴などで活躍。23年には宮崎大祐監督による映画『#ミトヤマネ』の主題歌 & 音楽ディレクションを担当したことでも話題を呼んだ。1stアルバム『Ordinary』を4月10日にリリースした。 つやちゃん 文筆家。寄稿やインタビューのほか、メディアでの企画プロデュースや、アーティストのコンセプトメイキングなどで活躍。著書に『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』〈DU BOOKS〉、監修・執筆に『オルタナティヴR&Bディスクガイド』〈DU BOOKS〉など。インディペンデント・アーティストを支えるコミュニティ「一般社団法人B-Side Incubator」理事。 文・つやちゃん 写真・YURI HORIE 編集・高杉賢太郎(GQ).

【はじめに】 KANDYTOWNの終演や舐達麻の躍進、BAD HOPの東京ドームのラスト・ライヴと解散、さらに千葉雄喜の始動と新たな若い才能の台頭。そして、ストリートとインターネットの関係の複雑化、ジェンダーの多様化、多種多様なオルタナティヴの開花も進行している。2020年代の折り返し地点を目前に、再び大きな転換点を迎えたかにみえる日本のヒップホップ。そんなシーンの最前線で活躍するアーティストやレジェンド、フェスやその主催者などへの取材を通して、「ヒップホップ・ジャパンの時代」を多角的に検証する短期連載。 valkneeは折れない NYのブロンクスで生まれたその瞬間から、ヒップホップはストリート由来の、声なき者によるカルチャーとして世界中に伝播していった。2024年の日本では、そういったヒップホップのコアを継承しながらもこの国特有の文化的背景を取り入れた、オルタナティブなヒップホップが新たなシーンを形成しつつある。今年の「POP YOURS」でヘッドライナーを務めたTohjiは、まさに象徴的な存在だろう。 2019年にデビューしたvalkneeも、オルタナティブなシーンを代表するラッパーのひとり。ヒップホップが好きな一方でアイドル音楽やインターネットミュージックを好み、自身のナードなルーツを組み合わせることで個性あふれる音楽性を築き上げてきた。ただ、その道は苦難の連続だったという。男性中心かつストリート発の不良性を美徳とする価値観が主流の中で、女性として、文化系としてラッパーの活動を続けていくことの難しさ。しかし、valkneeは折れない。先日ファーストアルバム『Ordinary』をリリースしワンマンライブも成功させた彼女に、今のモードと、シーンに対して考える胸の内を訊いた。 ───valkneeさんは2019年にEP『FIRE BAE』を初めて配信リリースして、5年以上が経ちますね。この5年間で、ヒップホップシーンも大きく変化した印象があります。 たった5年の間に、色んなことが変わりましたね。当時は、今活躍してる人たちもすでにいたんだけれど、まだ区画整理されていない状態で各自が活動を展開していた感じでした。Kamuiもすでにいたし、lil soft tennisやrirugiliyangugiliもいた。SATOHも活動はしていて、自分もイベントに誘ってもらったりしていました。でも、まだ混沌としていて、ヒップホップのメインストリームもオルタナティヴもあまり区別がなかった。 ───女性のラッパーは? なかむらみなみちゃんはすでに活動していて、あとはMarukidoも近いところにいたのかな。Awichが代官山UNITでライブをしていて、普通にまだフロアで皆と写真撮ってる、みたいな頃でした。 ───そんな時代に、valkneeさんは一人で活動を始めてどのような試行錯誤をしていましたか? 私はアイドルとヒップホップが好きなので、デビュー当初は両方の現場に行って少しずつ知り合いができて、という地道なことを繰り返していました。あとは、ツイッター(笑)。それしかなかった。まだ有象無象の様々なスタイルのラッパーが入り混じってて、私もとにかく色んなところに顔を出す感じで。 ───そういった混沌としたシーンの状況が、変わりはじめたなと感じたきっかけはありますか? Tohjiの活躍だと思います。Tohjiがどんどんスケールアップしていくのを見て、皆が「こういうことってできるんだ」って希望を持った。その周りの人──釈迦坊主だったりRalphだったり──も大きくなっていって、それを見てラップに参入する人がすごく増えたし、イベントを打つ人も増えた。 ───イベント「TOKIO SHAMAN」は象徴的でした。 そうですね。あの時のメンツって、今活躍してるスター選手が集っててすごい。今でも2019年頃にBaticaでやってたイベントってネットで調べたら出てきますけど、TohjiとLEXが一緒に出てたりして、「ああ、こういうところから始まったんだよね……」と思うと感慨深くなります。だから、最近(下北沢)SPREADとか(恵比寿)Baticaとか(幡ヶ谷)Forestlimitとかで演ってる子たちも、何かピースが揃えばああいう風に一気に大きくなる可能性はあるんだろうなと思う。 ───先日のvalkneeさんのワンマンライブもまさにそういう勢いを感じました。あの規模感でvalkneeさんのリスナーが可視化されたのは初めてだったと思うんですが、オルタナティヴなヒップホップのリスナーがかなりの数と熱量で増えてきているのを実感しました。 熱かったですよね。オルタナティブなシーンは女性が多いというのが特徴だと思います。それこそAVYSS周辺のイベントとかは男女比がほぼ半々で、たまに女性の方が多かったりもする。文化系っぽい人も多い。でも私は本当にまだまだすべてが探り探りで、今回のアルバム(『Ordinary』)も、歌とラップをどのくらいの比率にするかも含めて悩みながら作っていました。自分ではラップの方が得意だと思ってるしラッパーだと見られたいし、すべて実験の繰り返し。 ───ちょっと時間軸を戻しますが、valkneeさんの転機でいうと、女性ラッパーたちとツイッターで連帯し結成したZoomgalsは大きかったんじゃないでしょうか。今振り返って、あの活動をどのように捉えていますか? 当時は、コロナ禍でTOKYO DRIFT FREESTYLEやラップのバトン企画が流行りはじめて。自分も何か企画したいと思ってたんですよね。最初は、「Zoom」っていう曲をきっかけに話題になればいいかなくらいにしか思ってなかったんだけど、実際やってみたら想定以上の反響だった。zoomgalsの曲って、あのメンバーでは珍しいくらい普通のラップをしてるんですよ。メロディとかほとんど歌ってないし、オルタナティヴな感じを出していない。だからこそヒップホップのメインストリームのリスナーが反応した。自分としては、あれは男性中心のヒップホップに対するカウンターの意味合いで、ヒップホップ然としたことをあえて真似たわけですけどね。私の周りのアーティストの子たちからは、あのラップスタイルは好きじゃないと言われたりしました。でも、世の中へのアピールとしてはああいう正統派のラップの方が理解されやすいんだろうなというのも分かってやっていたので。自分が普段好きで聴いている音楽との乖離は大きかったから、どこかで意識して戻さなきゃと考えていましたね。 ───Zoomgalsの功績は、結果的に、女性同士の連帯という動きを様々なシーンへ波及させた点にあると思います。 確かに、ラップシーンだけじゃなくバンドとかも含めた色んな文化圏で、令和ギャル的な感じで女の子が連帯するムードが生まれたかも。でも、Zoomgalsのメンバーは本当にばらばらで、そもそもマッチョなヒップホップに対するカウンターという見られ方をされるのも嫌だと言っている子もいたし、全員がしっくりきてやっていたわけではないんですよ。だから、あの後は皆がそれぞれ自分の活動に戻っていったわけですけど。 ───その後、valkneeさんも自身の活動に戻って、いかがでしたか? zoomgalsはやっぱり話題にはなったので、そこで出した数字を超えなきゃみたいなプレッシャーは勝手に感じていました。数字もかなり乖離があったし、手探り期間が長かった。そもそもコロナ禍真っ最中であまり動けなかったし、自主企画イベントを打ったり、少しずつ動けていった感じです。 ───そのあたりから、音楽性が変化していきます。まさにこれがやりたかったんだ、というようなオルタナティヴなヒップホップに移っていきました。 2021年くらいですよね。hirihiriくんと出会って、私もハイパーポップ寄りの音楽が好きだったし、振り返ると、元々私はMaltine Recordsなどのオタクなサウンドを好んで聴いてたんですよね。だから100 gecsが出てきた時にも、皆で「これはやばいね」ってなって。 ───ジャンクなものに対する関心、というのがvalkneeさんのルーツにありますよね。 そう。ネットミーム的なものも好きで、ヒット曲そのままよりもそれを改造したやつが好き、みたいな。一方でヒップホップやトラップも大好きだったけど、でも100 gecs以降、その両者がミックスされていったわけじゃないですか。まさか私の好きな二つが融合されるなんて思ってもなかった。そこでhirihiriくんと会ったタイミングで、もっと自分のルーツを掘ってみようということで色々振り返ってたら、アイドル音楽やMaltine Records系のオタクな要素が出てきて、私ってやっぱりこういう音楽性なんだよね、って。 ───時代的にも、valkneeさんの好み的にも、ハイパーなオルタナティヴ・ヒップホップがそこで繋がったということですね。その後のトピックで言うと、2023年にTV番組「ラップスタア誕生」に出演されました。あれこそ、主流を占める王道の価値観とvalkneeさんのオルタナティヴな価値観との狭間で葛藤されたのではないでしょうか。 結局、私は都会出身の文化系の女なんです。出自が違いすぎて、王道のヒップホップからは共感してもらえないわけですよ。それはもう、ひしひしと感じた。違うのは明らかなわけだから、だったら自分ならではの音楽を模索しようという方向にようやく踏ん切りがついた。ようやくやっと、最近になって納得したって感じです。それまでは「私はヒップホップが好きだし、私なりにヒップホップをやってるんだから理解しろよ」って思ってた。ただ、色んな現場に足を運んだり「ラップスタア誕生」に出たりする中で、自分の中で納得する気持ちになっていきました。王道ヒップホップは王道ヒップホップで、その人たちのものだよな、って。私の考えもだいぶ変わった。ラップスタアに出た収穫は、それですね。 ───ただ、ヒップホップのフェスを見ていると、男性は色んなスタイルの人がいますよね。でも女性のラッパーとして本当の意味でヒップホップのメインストリームに入っていけるスタイルというのは、依然としてかなり限られているように思います。 女性はやっぱり、悪そうでヤンキー的なスタイルですよね。それか、ポップなスタイル。それ以外のヒップホップをやっている女性ラッパーもたくさんいるけどメインストリームには入っていけない。「ラップスタア誕生」で今までにない数のたくさんの人に聴いてもらえて、コメントもいっぱいもらうじゃないですか。批判的なコメントをしている人のアカウントとか見てみたんですけど(笑)、なんとなくどんなライフスタイルの人なのか見えてくる。そりゃ違うわなって思いますよね。私はよくわかんない服着て歌ってる意味わかんない人にしか見えないだろうなってつくづく思う。価値観のすべてが違いすぎるというか。 ───valkneeさんはずっと既存のヒップホップと戦ってきて、そうなると「もうヒップホップはいいかな」と考えてラッパーではなくアーティストとしてやっていく方向に切り替える人もいるかと思います。でも、まだラッパーを名乗って、オルタナティヴとは言えヒップホップをやっている。それは、なぜなのでしょう? 恨み。 ───恨み! 恨みというか、意地というか、嫌がらせというか(笑)。ここでやめたら、もう未来永劫、文化系の女性ラッパーは大きいステージに立てないということじゃないですか。それってめちゃくちゃ嫌な世界ですよね。それを変える人間は今いないし、不毛なチャレンジに見えるかもしれないけど、変えることの方がロマンがあると思う。だから、「POP YOURS」にピーナッツくんとPAS TASTAが出て私はすごく希望を感じたんですよ。今までになかったスタイルじゃないですか。 ───次の世代に向けて伝えたいことは? 景気が悪いし、娯楽なり音楽なりに使えるお金もどんどん減ってきてる中で、周りのアーティストも(サブスクで)月間1万人のリスナーに聴いてもらえるかというところですごく苦戦している状況。才能を持った若いアーティストがかなりの数出てきてるけど、やっぱり埋もれちゃってなかなか聴いてもらえないですよね。悲観してしまってもう活動をやめちゃうとか、そういう人も多い。でも私も働きながらラッパーをやってたし、そういうのも含めて、長期で考えてやっていった方がいいと思う。続けていたら人とのつながりで前進することもあるし、やりながら考えていこうよ大丈夫だよ、って伝えたいです。 ───valkneeさんは7/7に、若手のアーティスト/ラッパーを集めたサーキット型イベント「Crash Summer」も主宰・企画していますね。 5年前にLEXもTohjiもBaticaでやってたんだ、という話をしましたけど、このイベントもそういったものにしたいです。ヒップホップから派生した色んな音楽性のアーティストを観ることができるし何年か後に大きくなってる人たちばかりだと思うので、ぜひ遊びに来てほしい! valknee 2019年にキャリアをスタート。ラッパーの田島ハルコ、なみちえ、ASOBOiSM、Marukido、あっこゴリラと、Zoomgalsとしての活動や、「ラップスタア誕生2023」への出演、他アーティストへの楽曲提供や映画の劇伴などで活躍。23年には宮崎大祐監督による映画『#ミトヤマネ』の主題歌 & 音楽ディレクションを担当したことでも話題を呼んだ。1stアルバム『Ordinary』を4月10日にリリースした。 つやちゃん 文筆家。寄稿やインタビューのほか、メディアでの企画プロデュースや、アーティストのコンセプトメイキングなどで活躍。著書に『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』〈DU BOOKS〉、監修・執筆に『オルタナティヴR&Bディスクガイド』〈DU BOOKS〉など。インディペンデント・アーティストを支えるコミュニティ「一般社団法人B-Side Incubator」理事。 文・つやちゃん 写真・YURI HORIE 編集・高杉賢太郎(GQ)

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