函館工業高等専門学校でシステムインテグレーターTDCソフトがUXデザイン授業を展開。学生たちはユーザー視点に立ち、業務システムの問題解決策を見つけるトレーニングを行っている。
という風刺画が流行った。 システム開発 プロジェクトにおけるさまざまな教訓が読み取れる風刺画だが、筆者が特に面白いと感じたのは「実は、顧客自身も問題の本質が見極められておらず、自分が必要なものも分かっていない」という指摘だ。その指摘は、現在でもしばしば当てはまるだろう。 函館工業高等専門学校(函館高専)の生産システム工学科で、システムインテグレーターの TDCソフト (以下、TDC)が「 UXデザイン 」の授業を展開している(UX:ユーザー体験)。2022年度にスタートし、今年度が3年目となる取り組みだ。 この演習では、TDCが開発した教材を使ってデザイン思考のプロセスを実践しながら、学生たちに「どうやったらユーザー視点に立てるのか」を伝えているという。言い換えればこれは、問題の本質を深掘りして適切な解決策=“顧客が本当に必要だったもの”を発見するためのトレーニングである。「 UXデザイン 演習」は、函館高専 生産システム工学科の5年生向けに開講されている「ヒューマンインタフェース」の授業の中で、TDCが開発した教材「 UXデザイン スターターキット(以下、UXキット)」を活用しながら行われている。 ヒューマンインタフェースは通年(前後期)の授業であり、人間の認知特性やインタフェースデザインの手法、出来上がったデザインの評価方法などを学ぶ。その最終段階の“実践編”として、6週をかけて行われるのが UXデザイン 演習だ。講師としてTDCのUXデザイナーも参加している。 同授業を担当する函館高専 生産システム工学科 教授の小山慎哉氏は、「やはり具体的な“デザインにおけるツボ”のような話は、企業の第一線で実際に製品を開発されている方からアドバイスいただくのが有効だと考え、この演習を取り入れています」と説明する。小山氏は、この演習では特に「ユーザーのペルソナを明確にする」ステップを重視している点が良いと評価する。学生たちが将来的にものづくり、ソフトウェア開発といった仕事に就く際には、技術だけでなく「どんなユーザーが、何のために使うか」という視点が欠かせないと考えるからだ。 「ユーザー像があいまいなまま製品のデザインに取り組んでも、良いものは作れません。作り手側の“思い込み”だけではだめで、実際に当事者への聞き取りを行い、潜在的なニーズや課題まで深掘りして理解する必要があります。(UXキットの)演習シートを使えば、ユーザーがうまく言語化できないものも掘り下げてインタビューできるので、その点は役立つと考えています」(小山氏)TDCでは2021年にCX& UXデザイン 推進室を立ち上げ、SIサービスや自社プロダクト開発において、CX/ UXデザイン 視点から顧客への提案、社内の開発部門への支援などを行ってきた。ただし、取り組みをスタートさせたきっかけには、自社開発製品での“失敗”があったと、CX& UXデザイン 推進室 UXデザイナーの酒井美彩都氏は苦笑いする。 「わたしは高専の情報工学科を卒業後、TDCに入社し、2年目に自社開発製品のプロジェクトに配属されました。『どういった製品ならばお客様に喜んでいただけるか』を自分たちで考え、開発全体を手がけ、その後も営業や販促の活動まで行ったのですが……。リリースしてみると、ほとんど受注にはつながりませんでした」(酒井氏)製品に興味を持ってくれる顧客は多くいたが、具体的に商談が進んでも、受注には至らない。必死に開発してきた製品だけに、酒井氏の失望は大きかった。「なぜうまくいかなかったのか」の理由を模索するうちに、 UXデザイン という考え方に出会った。 「いま振り返ってみると、その製品ではお客様における導入までのプロセスを、わたしたちがきちんと考え切れていませんでした。『その部分はお客様で考えてください』と委ねるようなものになっていたのです。お客様がどのように導入されたいのか、そこまで想像できていなかったのが失敗の理由だったと思います」(酒井氏)業務システムの領域は、現在でも「 UXデザイン がいちばん入っていない」領域だと、酒井氏は指摘する。コンシューマー領域では UXデザイン の大切さは広く認識されているが、従業員しか触らない業務システムでは、やはり UXデザイン の優先度は低くなりがちだ。 TDCが UXデザイン に取り組み始めたころは、 UXデザイン という考えそのものの認知度も低く、システム提案時に“付加価値”としてデザイン提案を付け加えることもあったという。しかし、最近ではその状況も変わり、顧客側から「 UXデザイン に取り組みたい」と依頼が来るケースもかなり増えている。.
という風刺画が流行った。システム開発プロジェクトにおけるさまざまな教訓が読み取れる風刺画だが、筆者が特に面白いと感じたのは「実は、顧客自身も問題の本質が見極められておらず、自分が必要なものも分かっていない」という指摘だ。その指摘は、現在でもしばしば当てはまるだろう。 函館工業高等専門学校(函館高専)の生産システム工学科で、システムインテグレーターのTDCソフト(以下、TDC)が「UXデザイン」の授業を展開している(UX:ユーザー体験)。2022年度にスタートし、今年度が3年目となる取り組みだ。 この演習では、TDCが開発した教材を使ってデザイン思考のプロセスを実践しながら、学生たちに「どうやったらユーザー視点に立てるのか」を伝えているという。言い換えればこれは、問題の本質を深掘りして適切な解決策=“顧客が本当に必要だったもの”を発見するためのトレーニングである。「UXデザイン演習」は、函館高専 生産システム工学科の5年生向けに開講されている「ヒューマンインタフェース」の授業の中で、TDCが開発した教材「UXデザインスターターキット(以下、UXキット)」を活用しながら行われている。 ヒューマンインタフェースは通年(前後期)の授業であり、人間の認知特性やインタフェースデザインの手法、出来上がったデザインの評価方法などを学ぶ。その最終段階の“実践編”として、6週をかけて行われるのがUXデザイン演習だ。講師としてTDCのUXデザイナーも参加している。 同授業を担当する函館高専 生産システム工学科 教授の小山慎哉氏は、「やはり具体的な“デザインにおけるツボ”のような話は、企業の第一線で実際に製品を開発されている方からアドバイスいただくのが有効だと考え、この演習を取り入れています」と説明する。小山氏は、この演習では特に「ユーザーのペルソナを明確にする」ステップを重視している点が良いと評価する。学生たちが将来的にものづくり、ソフトウェア開発といった仕事に就く際には、技術だけでなく「どんなユーザーが、何のために使うか」という視点が欠かせないと考えるからだ。 「ユーザー像があいまいなまま製品のデザインに取り組んでも、良いものは作れません。作り手側の“思い込み”だけではだめで、実際に当事者への聞き取りを行い、潜在的なニーズや課題まで深掘りして理解する必要があります。(UXキットの)演習シートを使えば、ユーザーがうまく言語化できないものも掘り下げてインタビューできるので、その点は役立つと考えています」(小山氏)TDCでは2021年にCX&UXデザイン推進室を立ち上げ、SIサービスや自社プロダクト開発において、CX/UXデザイン視点から顧客への提案、社内の開発部門への支援などを行ってきた。ただし、取り組みをスタートさせたきっかけには、自社開発製品での“失敗”があったと、CX&UXデザイン推進室 UXデザイナーの酒井美彩都氏は苦笑いする。 「わたしは高専の情報工学科を卒業後、TDCに入社し、2年目に自社開発製品のプロジェクトに配属されました。『どういった製品ならばお客様に喜んでいただけるか』を自分たちで考え、開発全体を手がけ、その後も営業や販促の活動まで行ったのですが……。リリースしてみると、ほとんど受注にはつながりませんでした」(酒井氏)製品に興味を持ってくれる顧客は多くいたが、具体的に商談が進んでも、受注には至らない。必死に開発してきた製品だけに、酒井氏の失望は大きかった。「なぜうまくいかなかったのか」の理由を模索するうちに、UXデザインという考え方に出会った。 「いま振り返ってみると、その製品ではお客様における導入までのプロセスを、わたしたちがきちんと考え切れていませんでした。『その部分はお客様で考えてください』と委ねるようなものになっていたのです。お客様がどのように導入されたいのか、そこまで想像できていなかったのが失敗の理由だったと思います」(酒井氏)業務システムの領域は、現在でも「UXデザインがいちばん入っていない」領域だと、酒井氏は指摘する。コンシューマー領域ではUXデザインの大切さは広く認識されているが、従業員しか触らない業務システムでは、やはりUXデザインの優先度は低くなりがちだ。 TDCがUXデザインに取り組み始めたころは、UXデザインという考えそのものの認知度も低く、システム提案時に“付加価値”としてデザイン提案を付け加えることもあったという。しかし、最近ではその状況も変わり、顧客側から「UXデザインに取り組みたい」と依頼が来るケースもかなり増えている。
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