昨今行われたジャニーズ事務所の計2回の記者会見は、各メディアがネットでライブ配信したこともあり、現場の取材記者の態度、ひいてはジャーナリズムの在り方が大きく問われることとなっ…|BIGLOBEニュース
筆者はライターとして記者会見に出席する側であると同時に、インターネットユーザー協会代表理事として記者会見を主催したこともあり、両方の立場を経験している。今回はその立場から、そもそも記者会見とは一体なんなのか、またそれがネットにそのまま出て行くことでジャーナリズムはどうなるのか、といった話をしてみたい。 そもそも記者会見とは、報道陣を集めてまとめて説明を行なうことで、膨大な数発生するであろう個別取材への対応を効率化するための手段である。主には、新製品発表や新会社設立、芸能人の結婚などのポジティブな案件と、不祥事に対する釈明・謝罪といったネガティブな案件に分けられる。ちなみに謝罪のために記者会見を行なうのは日本と韓国だけという話をどこかで読んだことがあるが、独特の謝罪文化があるという点ではそうなのかもしれない。 ポジティブな会見は実質的には発表会、もしくは報告会であり、企業の広報担当や広報代理店が仕切るケースが多い。会前段の発表部分がメインだが質疑応答もあり、主催者側はもっといろいろ聴いてほしいという立場である。 一方ネガティブな会見はリスクマネジメントの一環であり、専門のコンサルティング会社が仕切るケースが多い。前段の主催者側の説明では、聴かれたくないことは当然自主的には話さないことになり、後半の質疑応答が主戦場となる。そこでその「聴かれたくないこと」をどう説明するのか、事前に想定質問を作って回答も事前に用意する。法的リスクを回避するため、弁護士が同席するケースも多い。これを踏まえて、昨今のジャニーズの2回の記者会見を分析すると、1回目は明らかに謝罪会見である。新社長の発表など人事情報もあったが、基本的には事実確認も踏まえた上での謝罪会見であり、質疑応答も時間無制限で行われた。 この質疑応答では、記者からは質問というより糾弾や叱責に近い「意見」が長々と語られるケースが多かった。この混乱した様子から、ネットでは単にメディアが爪痕を残したいだけ、といった厳しい意見が散見された。しかしその中で、新社長から「鬼畜の所業」というパワーワードを引き出すことに成功し、多くのメディアはそれをこぞって報じた。 一方2回目の会見は、ベーシックに新社名発表という、報告会的性格のものである。新事実が発覚したのでなければ、謝罪会見は重ねて行なうものではない。ただ事件の性質上、性被害に対する補償問題があるわけで、質疑はそこに集中する事が予想される。初回の質疑応答は4時間を超える事態となり、それをリスクと考えたこと、また今回は謝罪会見ではないということから、終わり時間を設定するべきと考えたのだろう。 加えて今回の質問は、1社1問というルールが設けられた。限られた時間の中でより多くの質問を受けるため、と説明されたが、質疑応答とは質問を上乗せしていくことで情報を整理したり、回答が避けられた場合に別の聴き方をして核心に迫るといった、「更問い(さらとい)」を行うものである。記者には入場前に本日のアジェンダが配布され、1社1問というルールは事前告知されていたはずだ。それに納得出来ない者は入場できないわけで、この制限をクリアするため、ジャーナリスト達はあうんの呼吸で、誰かの質問に追加して別の人が更問いで追うという格好で共闘する事もある。 この2回目の会見では、最初の2社は1問のみの質問であったが、3社目のTBSの記者が1度に2問質問したのを皮切りに、ルールが守られなくなっていった。マスメディアがルールを守らないのであれば、フリージャーナリストがかたくなに守る意義はない。この時点で現場ではおそらく、「共闘は無理」という雰囲気になったのだろう。 さらに会見場が紛糾したのは、ジャニーズファンクラブ歴30年という女性ジャーナリストの、長々とした発言以降である。質問というよりは、現マスメディアへの批難とジャニーズ擁護とも取れる「意見」であった。会見の残り時間もあと20分を切ったところであり、いつまでも指名されないジャーナリストが司会者を無視して勝手に質問するという格好に崩れていった。けしからん、と思われるかもしれないが、実際の現場では、メディアの扱いは最初から公平ではない事が多い。会場に遅れて入っても広報が飛んできてしっかり席に案内される者もいれば、そのまま壁際で立たされ続ける者もいるのが現実だ。自分たちにとって都合の良いジャーナリストと都合の悪いジャーナリストは、当然区別される。 たださすがに、最初から全く指名する気がないというのは、大問題だ。だが指名の順番を後ろに回して時間切れになるなら、言い訳は立つと考えたのだろう。だが記者会見とは一種のライブパフォーマンスである。進行台本はあるものの、来場者は「観客」ではなく「モノを言うのが仕事」の者なので、場の流れや雰囲気によって生き物のように変化する。2回目の記者会見は、来場者は294名、内訳はムービー取材73名、スチルカメラ54名、記者167名となっている。ムービーの人数が多いが、多くは映像と音声の2人チームなので、実質はその半分だと思っていいだろう。 筆者としては、メディアのどの部署が来ていたのかを問題にしたい。性加害および補償はすでに世界が注目する社会問題であり、本来ならば社会部の記者がもっと詰めるべきである。だが質問の内容を見ると、やはり文化・芸能系の記者やフリーライターが大半のように見える。 質問として、「東山社長はどう思うか」という問いにはへきえきとした。一般的には、会社社長の「感想」に価値はない。責任者として具体的にどうするつもりか、どう責任を取るのかに価値がある。だが多くの記者が「感想」を求めた背景には、いまだ東山社長をタレントとして見ているという事である。タレントの「感想」は、芸能メディアにとっては価値があるからだ。 会見はおよそ2時間でネット中継も行われ、誰でもアーカイブで確認できる。ネットでは、メディアの質問内容や態度にいらだちを感じた人も多いが、全編をくまなく見た人は少ないだろう。「ハイライト」だけを切り出したものを見ても、その意見は「ハイライト」の編集者によって誘導されたものにすぎない。「映像編集」とはそういう力を持っているということに、もう少し意識的になるべきだろう。 これは視聴者だけでなく、メディアにも同じことがいえる。「公正な報道をする」と言いつつ、おもしろおかしいところだけ取りだして編集したら、それは社会記事ではなく芸能記事である。メディアの立ち位置がそこで分かるというか、報道番組の体であっても実態は芸能情報番組であることが自ずと知れるということに意識的になるべきだ。 記者会見の場で、長々と自説を披露するジャーナリストも多い。これはもちろん、自己を顕示することにメリットがあるからだ。メディアが刺激的な言葉で長々と意見を述べるのは、ネットで中継され、そこが切り取られることを意識している。刺激的なことを言えば、それだけ今後の記事のビューが見込める。 主催者側におもねる芸能ジャーナリストは、相手に自分を覚えてもらって、今後の取材をやりやすくするという狙いがある。その発言がネットで批判されても関係ない。なぜならば、主戦場は「紙メディア」だからである。「紙」の読者は、ネットの一過性の評判など全く見ていないし、知らない。仮に知っても、信用していない。書籍や雑誌で刺激的なタイトルで煽れば、手に取る人は多いのだ。 もちろんメディア人としては、悪い意味で世間の名前を覚えられることは、直近の取材では障害になるというデメリットもある。だがネットがない時代ですら「人のうわさも七十五日」なのだ。ネットのうわさが霧散するのはもっと早い。中長期的には、 名前が知られたことのメリットの方が勝る。 一方でジャニーズ側は、これまでネットへの露出や取材を制限してきたこともあって、ネットで批判されても全くの無反応を貫いてきた。だが今はそのような時代ではなく、ネット上の批判に対してもリスクヘッジが必要だ。NGリストの存在に関して、子供の言い訳のような意味が通じないリリースが早い段階で出てきたのは、コンサルティング会社なしでリリース文を書いたからだろう(編集注:ジャニーズ事務所はその後、NGリストに関する調査リリースを掲載している)。 記者会見全体がネットで共有され、多種多様な視点からの意見をSNSで見られるのは、事件の全体像を多面的に分析するのに役に立つ。自分1人では気が付けなかった問題に気付くことができるわけで、当然ジャーナリズムにも影響を与える。 それが高じて深みのある記事が出てくればいいのだろうが、いわゆる「編集長」クラスが変化を否定する傾向がある。各メディアには特性やポジションというものがあり、それを維持することも生き残り戦略の1つだからだ。 ジャニーズに対する忖度がなくなったのが単なるトレンドや流れであるならば、本質的な変化が起こるまでは相当時間がかかるだろう。そして本質的な変化が起こる時には、もうメディアが今の形をしていない時とイコールである可能性は高い。.
筆者はライターとして記者会見に出席する側であると同時に、インターネットユーザー協会代表理事として記者会見を主催したこともあり、両方の立場を経験している。今回はその立場から、そもそも記者会見とは一体なんなのか、またそれがネットにそのまま出て行くことでジャーナリズムはどうなるのか、といった話をしてみたい。 そもそも記者会見とは、報道陣を集めてまとめて説明を行なうことで、膨大な数発生するであろう個別取材への対応を効率化するための手段である。主には、新製品発表や新会社設立、芸能人の結婚などのポジティブな案件と、不祥事に対する釈明・謝罪といったネガティブな案件に分けられる。ちなみに謝罪のために記者会見を行なうのは日本と韓国だけという話をどこかで読んだことがあるが、独特の謝罪文化があるという点ではそうなのかもしれない。 ポジティブな会見は実質的には発表会、もしくは報告会であり、企業の広報担当や広報代理店が仕切るケースが多い。会前段の発表部分がメインだが質疑応答もあり、主催者側はもっといろいろ聴いてほしいという立場である。 一方ネガティブな会見はリスクマネジメントの一環であり、専門のコンサルティング会社が仕切るケースが多い。前段の主催者側の説明では、聴かれたくないことは当然自主的には話さないことになり、後半の質疑応答が主戦場となる。そこでその「聴かれたくないこと」をどう説明するのか、事前に想定質問を作って回答も事前に用意する。法的リスクを回避するため、弁護士が同席するケースも多い。これを踏まえて、昨今のジャニーズの2回の記者会見を分析すると、1回目は明らかに謝罪会見である。新社長の発表など人事情報もあったが、基本的には事実確認も踏まえた上での謝罪会見であり、質疑応答も時間無制限で行われた。 この質疑応答では、記者からは質問というより糾弾や叱責に近い「意見」が長々と語られるケースが多かった。この混乱した様子から、ネットでは単にメディアが爪痕を残したいだけ、といった厳しい意見が散見された。しかしその中で、新社長から「鬼畜の所業」というパワーワードを引き出すことに成功し、多くのメディアはそれをこぞって報じた。 一方2回目の会見は、ベーシックに新社名発表という、報告会的性格のものである。新事実が発覚したのでなければ、謝罪会見は重ねて行なうものではない。ただ事件の性質上、性被害に対する補償問題があるわけで、質疑はそこに集中する事が予想される。初回の質疑応答は4時間を超える事態となり、それをリスクと考えたこと、また今回は謝罪会見ではないということから、終わり時間を設定するべきと考えたのだろう。 加えて今回の質問は、1社1問というルールが設けられた。限られた時間の中でより多くの質問を受けるため、と説明されたが、質疑応答とは質問を上乗せしていくことで情報を整理したり、回答が避けられた場合に別の聴き方をして核心に迫るといった、「更問い(さらとい)」を行うものである。記者には入場前に本日のアジェンダが配布され、1社1問というルールは事前告知されていたはずだ。それに納得出来ない者は入場できないわけで、この制限をクリアするため、ジャーナリスト達はあうんの呼吸で、誰かの質問に追加して別の人が更問いで追うという格好で共闘する事もある。 この2回目の会見では、最初の2社は1問のみの質問であったが、3社目のTBSの記者が1度に2問質問したのを皮切りに、ルールが守られなくなっていった。マスメディアがルールを守らないのであれば、フリージャーナリストがかたくなに守る意義はない。この時点で現場ではおそらく、「共闘は無理」という雰囲気になったのだろう。 さらに会見場が紛糾したのは、ジャニーズファンクラブ歴30年という女性ジャーナリストの、長々とした発言以降である。質問というよりは、現マスメディアへの批難とジャニーズ擁護とも取れる「意見」であった。会見の残り時間もあと20分を切ったところであり、いつまでも指名されないジャーナリストが司会者を無視して勝手に質問するという格好に崩れていった。けしからん、と思われるかもしれないが、実際の現場では、メディアの扱いは最初から公平ではない事が多い。会場に遅れて入っても広報が飛んできてしっかり席に案内される者もいれば、そのまま壁際で立たされ続ける者もいるのが現実だ。自分たちにとって都合の良いジャーナリストと都合の悪いジャーナリストは、当然区別される。 たださすがに、最初から全く指名する気がないというのは、大問題だ。だが指名の順番を後ろに回して時間切れになるなら、言い訳は立つと考えたのだろう。だが記者会見とは一種のライブパフォーマンスである。進行台本はあるものの、来場者は「観客」ではなく「モノを言うのが仕事」の者なので、場の流れや雰囲気によって生き物のように変化する。2回目の記者会見は、来場者は294名、内訳はムービー取材73名、スチルカメラ54名、記者167名となっている。ムービーの人数が多いが、多くは映像と音声の2人チームなので、実質はその半分だと思っていいだろう。 筆者としては、メディアのどの部署が来ていたのかを問題にしたい。性加害および補償はすでに世界が注目する社会問題であり、本来ならば社会部の記者がもっと詰めるべきである。だが質問の内容を見ると、やはり文化・芸能系の記者やフリーライターが大半のように見える。 質問として、「東山社長はどう思うか」という問いにはへきえきとした。一般的には、会社社長の「感想」に価値はない。責任者として具体的にどうするつもりか、どう責任を取るのかに価値がある。だが多くの記者が「感想」を求めた背景には、いまだ東山社長をタレントとして見ているという事である。タレントの「感想」は、芸能メディアにとっては価値があるからだ。 会見はおよそ2時間でネット中継も行われ、誰でもアーカイブで確認できる。ネットでは、メディアの質問内容や態度にいらだちを感じた人も多いが、全編をくまなく見た人は少ないだろう。「ハイライト」だけを切り出したものを見ても、その意見は「ハイライト」の編集者によって誘導されたものにすぎない。「映像編集」とはそういう力を持っているということに、もう少し意識的になるべきだろう。 これは視聴者だけでなく、メディアにも同じことがいえる。「公正な報道をする」と言いつつ、おもしろおかしいところだけ取りだして編集したら、それは社会記事ではなく芸能記事である。メディアの立ち位置がそこで分かるというか、報道番組の体であっても実態は芸能情報番組であることが自ずと知れるということに意識的になるべきだ。 記者会見の場で、長々と自説を披露するジャーナリストも多い。これはもちろん、自己を顕示することにメリットがあるからだ。メディアが刺激的な言葉で長々と意見を述べるのは、ネットで中継され、そこが切り取られることを意識している。刺激的なことを言えば、それだけ今後の記事のビューが見込める。 主催者側におもねる芸能ジャーナリストは、相手に自分を覚えてもらって、今後の取材をやりやすくするという狙いがある。その発言がネットで批判されても関係ない。なぜならば、主戦場は「紙メディア」だからである。「紙」の読者は、ネットの一過性の評判など全く見ていないし、知らない。仮に知っても、信用していない。書籍や雑誌で刺激的なタイトルで煽れば、手に取る人は多いのだ。 もちろんメディア人としては、悪い意味で世間の名前を覚えられることは、直近の取材では障害になるというデメリットもある。だがネットがない時代ですら「人のうわさも七十五日」なのだ。ネットのうわさが霧散するのはもっと早い。中長期的には、 名前が知られたことのメリットの方が勝る。 一方でジャニーズ側は、これまでネットへの露出や取材を制限してきたこともあって、ネットで批判されても全くの無反応を貫いてきた。だが今はそのような時代ではなく、ネット上の批判に対してもリスクヘッジが必要だ。NGリストの存在に関して、子供の言い訳のような意味が通じないリリースが早い段階で出てきたのは、コンサルティング会社なしでリリース文を書いたからだろう(編集注:ジャニーズ事務所はその後、NGリストに関する調査リリースを掲載している)。 記者会見全体がネットで共有され、多種多様な視点からの意見をSNSで見られるのは、事件の全体像を多面的に分析するのに役に立つ。自分1人では気が付けなかった問題に気付くことができるわけで、当然ジャーナリズムにも影響を与える。 それが高じて深みのある記事が出てくればいいのだろうが、いわゆる「編集長」クラスが変化を否定する傾向がある。各メディアには特性やポジションというものがあり、それを維持することも生き残り戦略の1つだからだ。 ジャニーズに対する忖度がなくなったのが単なるトレンドや流れであるならば、本質的な変化が起こるまでは相当時間がかかるだろう。そして本質的な変化が起こる時には、もうメディアが今の形をしていない時とイコールである可能性は高い。
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