統計学の解説書ながら42万部超えの異例のロングセラーとなっている『統計学が最強の学問である』。そのメッセージと知見の重要性は、統計学に支えられるAIが広く使われるようになった…|BIGLOBEニュース
比較対照には「関心のある疾患と リスク 要因の有無以外は条件がよく似た人」が選ばれる。「よく似た」の定義は研究によってさまざまだが、関心のある リスク 要因以外は考える限りすべての条件について同等であることが望ましい。だからドールとヒルは、喫煙という リスク 要因以外の肺がんと関連しうる条件である、性別・年代・社会階層・居住地域といったものについて、調査対象とした患者と同様の人間を集めて男女別や年代別で区切ったグループごとに比較(専門用語でこれをとはいうものの、じつはフィッシャーはその晩年(ドールとヒルの研究が公表されたとき彼は62歳であり、その10年後にがんによって死亡している)、こうした疫学的な考え方に対してわざわざ論文まで書いて猛反対している。彼自身が熱心な愛煙家であったため、疫学や統計学に関わる人々の間では「フィッシャーほどの天才でも自分の好きなものをくさす研究には反対したくなるのだろうか」という冗談が言われることもあるが、必ずしも偏屈な年寄りの世迷言というわけでもないようだ。、という限界である。我々が今まったく想像もしないような何かが結果に影響していたとしても、ランダム化を行なう限り、知らず知らずのうちに「平均的には同様」となる。 だが、ケースコントロール研究ではどうだろうか。あくまで「同様」にできるのは、人為的に「同様」となるよう揃えた条件だけである。ドールとヒルの研究で言えば、年代、性別、社会階層と居住地域については「同様」かもしれないが、その他に結果に影響する要因があったとしても、肺がん患者と比較対照の間で同様かどうかはまったく保証されてはいないのだ。 たとえば社会階層として同じ「労働者」を選んだつもりでも、たまたま肺がん患者グループに煙突掃除夫が多数含まれており、煙突掃除夫だけが全イギリス人の中で異常に喫煙率の高い集団である、という状況では、やはり肺がん患者の喫煙率は高いという結果が得られるだろう。もちろんこれ以外にも批判はある。たとえばドールとヒルが収集してきたデータはイギリス人のみに偏った集団であり、すべての人に喫煙の害があてはまるわけではないのではないか、と疑う人もいるだろう。また、本人に聞き取り調査した結果だけでは、「肺がん患者ほど喫煙を大げさに報告する」という偏りがあった場合にどうするんだ、とかいった批判も考えられるかもしれない。こうした批判を黙らせたのは、初期のフラミンガム研究において中心的な役割を果たした統計家であるジェローム・コーンフィールドたちによる1959年の論文だ。コーンフィールドたちはそれまでに発表された喫煙とがんに関する世界中の全研究を引用し、総合的に判断した結果、喫煙ががんの リスク であると考えて間違いはないと結論づけた。なお、この日本における疫学研究とは、東北大学公衆衛生学講座の初代教授であり母子健康手帳の発明者である瀬木三雄らによる1957年の論文である。彼がこの時代に世界へインパクトを与えた疫学研究の1つを行なったことは、日本人がもっと誇るべき事実だろう。 異なる文化、異なる国民性、異なる社会構造を持っている集団においても同様に、喫煙の有無が肺がんと大きな関連性を示したのだ。少なくとも当時の日本では煙突掃除夫という職業はイギリスほど一般的なものではないはずである。 また、確かに、ケースコントロール研究のように肺がんという「結果」が出てから過去を調査するやり方では、グループ間での記憶や回答の傾向の違いが問題となるかもしれない。しかし、結果が出る前から集団を継続的に調査する、というフラミンガム研究のようなスタイルの疫学研究(なおこれをコホート研究と言う)によるエビデンスもコーンフィールドの論文では引用されている。 ドールとヒルは、その後行なった別の研究として、5万人の内科医の生活習慣とがんの発生を5年間調査し続けた結果、明らかに喫煙する者のほうが新規の肺がんの発症数が多かった、と報告している。またアメリカでは20万人近い高齢者に対するコホート研究の結果、やはり同様に喫煙者のほうが新規の肺がん発症数が多かったと結論づけられている。「揃えきれていない条件」にどこまでこだわるべきか 確かに、これらの疫学研究はすべてランダム化をしていないため、いくら条件を揃えようが「揃えきれていない条件が存在している可能性」が捨てきれるわけではない。だが逆に、ではいったい何が揃えきれていない条件として存在しているのだろうか。 科学的な厳密さにこだわれば「揃えきれていない条件」によって推定された リスク が存在しない可能性はもちろんある。だが、厳密さに執着するために「大きな危険かもしれない」とわかっていることをあえて避けないというのも愚かな判断ではないだろうか。もし本書を読んでいるあなたが喫煙者だとして、肺がんの激痛と抗がん剤による副作用に晩年悩まされる リスク を覚悟のうえで タバコ を吸うなら、それはそれで自由である。副流煙による家族や知人の健康 リスク もできれば考慮していただきたいところだが、「ランダム化比較実験で証明されていないから厳密には因果関係がわかっていない」というフィッシャーの立場をとることも否定はしない。 だが、政府が科学的な厳密さにこだわるせいで喫煙の対策をしないというのであれば、それは科学性以前の問題として「無能」だろう。たとえば我が国において、医療経済研究機構が最新の疫学研究をもとに算出したところによると、喫煙によって余計にかかる医療費や失われる労働力などを合わせ、毎年7兆円以上が日本経済の損失となっている(医療経済研究機構〈1999〉の推計結果)。 タバコ の税収や経済効果ではこの半分も補填できないのだ。 「厳密にはそうじゃないかもしれないから」と、GDPの1%以上となる7兆円の損失を見過ごすのはバカのすることである。肩身が狭いからというだけで政府の喫煙対策を批判する人たちは、自分がそうしたバカな国に住んでいたら今頃どうなるか、と考えてみればいい。 疫学研究に反論したい人は、考えられる限り結果を歪めうる条件について指摘すればいい。そうすることによって、疫学研究が思わぬ落とし穴にはまって間違った結論を導く可能性は減らせる。だが、そうした指摘に対しても統計家がデータを揃えてきたのであれば、その結果は信頼したほうが現実的には有用である。バカのひとつ覚えのような「ランダム化ではないから〜」という批判は不毛そのものだ。それは疫学以外の、政策や教育、経営などに関わる統計学的な観察研究についても同様のことが言えるだろう。 ちなみに「New England Journal of Medicine」という世界で最も影響力のある医学雑誌に、2000年に「同じ因果関係を分析しようとする医学研究において、果たして疫学研究はランダム化比較実験と比べ劣るものなのだろうか?」というテーマの研究が掲載された。その趣旨は、90年代前半の主要な医学雑誌に掲載された論文を比較検討した結果、である。そして、その理由としては「高度な統計手法によって、適切な条件の調整を行なうことができているから」という考察がなされていた。.
比較対照には「関心のある疾患とリスク要因の有無以外は条件がよく似た人」が選ばれる。「よく似た」の定義は研究によってさまざまだが、関心のあるリスク要因以外は考える限りすべての条件について同等であることが望ましい。だからドールとヒルは、喫煙というリスク要因以外の肺がんと関連しうる条件である、性別・年代・社会階層・居住地域といったものについて、調査対象とした患者と同様の人間を集めて男女別や年代別で区切ったグループごとに比較(専門用語でこれをとはいうものの、じつはフィッシャーはその晩年(ドールとヒルの研究が公表されたとき彼は62歳であり、その10年後にがんによって死亡している)、こうした疫学的な考え方に対してわざわざ論文まで書いて猛反対している。彼自身が熱心な愛煙家であったため、疫学や統計学に関わる人々の間では「フィッシャーほどの天才でも自分の好きなものをくさす研究には反対したくなるのだろうか」という冗談が言われることもあるが、必ずしも偏屈な年寄りの世迷言というわけでもないようだ。、という限界である。我々が今まったく想像もしないような何かが結果に影響していたとしても、ランダム化を行なう限り、知らず知らずのうちに「平均的には同様」となる。 だが、ケースコントロール研究ではどうだろうか。あくまで「同様」にできるのは、人為的に「同様」となるよう揃えた条件だけである。ドールとヒルの研究で言えば、年代、性別、社会階層と居住地域については「同様」かもしれないが、その他に結果に影響する要因があったとしても、肺がん患者と比較対照の間で同様かどうかはまったく保証されてはいないのだ。 たとえば社会階層として同じ「労働者」を選んだつもりでも、たまたま肺がん患者グループに煙突掃除夫が多数含まれており、煙突掃除夫だけが全イギリス人の中で異常に喫煙率の高い集団である、という状況では、やはり肺がん患者の喫煙率は高いという結果が得られるだろう。もちろんこれ以外にも批判はある。たとえばドールとヒルが収集してきたデータはイギリス人のみに偏った集団であり、すべての人に喫煙の害があてはまるわけではないのではないか、と疑う人もいるだろう。また、本人に聞き取り調査した結果だけでは、「肺がん患者ほど喫煙を大げさに報告する」という偏りがあった場合にどうするんだ、とかいった批判も考えられるかもしれない。こうした批判を黙らせたのは、初期のフラミンガム研究において中心的な役割を果たした統計家であるジェローム・コーンフィールドたちによる1959年の論文だ。コーンフィールドたちはそれまでに発表された喫煙とがんに関する世界中の全研究を引用し、総合的に判断した結果、喫煙ががんのリスクであると考えて間違いはないと結論づけた。なお、この日本における疫学研究とは、東北大学公衆衛生学講座の初代教授であり母子健康手帳の発明者である瀬木三雄らによる1957年の論文である。彼がこの時代に世界へインパクトを与えた疫学研究の1つを行なったことは、日本人がもっと誇るべき事実だろう。 異なる文化、異なる国民性、異なる社会構造を持っている集団においても同様に、喫煙の有無が肺がんと大きな関連性を示したのだ。少なくとも当時の日本では煙突掃除夫という職業はイギリスほど一般的なものではないはずである。 また、確かに、ケースコントロール研究のように肺がんという「結果」が出てから過去を調査するやり方では、グループ間での記憶や回答の傾向の違いが問題となるかもしれない。しかし、結果が出る前から集団を継続的に調査する、というフラミンガム研究のようなスタイルの疫学研究(なおこれをコホート研究と言う)によるエビデンスもコーンフィールドの論文では引用されている。 ドールとヒルは、その後行なった別の研究として、5万人の内科医の生活習慣とがんの発生を5年間調査し続けた結果、明らかに喫煙する者のほうが新規の肺がんの発症数が多かった、と報告している。またアメリカでは20万人近い高齢者に対するコホート研究の結果、やはり同様に喫煙者のほうが新規の肺がん発症数が多かったと結論づけられている。「揃えきれていない条件」にどこまでこだわるべきか 確かに、これらの疫学研究はすべてランダム化をしていないため、いくら条件を揃えようが「揃えきれていない条件が存在している可能性」が捨てきれるわけではない。だが逆に、ではいったい何が揃えきれていない条件として存在しているのだろうか。 科学的な厳密さにこだわれば「揃えきれていない条件」によって推定されたリスクが存在しない可能性はもちろんある。だが、厳密さに執着するために「大きな危険かもしれない」とわかっていることをあえて避けないというのも愚かな判断ではないだろうか。もし本書を読んでいるあなたが喫煙者だとして、肺がんの激痛と抗がん剤による副作用に晩年悩まされるリスクを覚悟のうえでタバコを吸うなら、それはそれで自由である。副流煙による家族や知人の健康リスクもできれば考慮していただきたいところだが、「ランダム化比較実験で証明されていないから厳密には因果関係がわかっていない」というフィッシャーの立場をとることも否定はしない。 だが、政府が科学的な厳密さにこだわるせいで喫煙の対策をしないというのであれば、それは科学性以前の問題として「無能」だろう。たとえば我が国において、医療経済研究機構が最新の疫学研究をもとに算出したところによると、喫煙によって余計にかかる医療費や失われる労働力などを合わせ、毎年7兆円以上が日本経済の損失となっている(医療経済研究機構〈1999〉の推計結果)。タバコの税収や経済効果ではこの半分も補填できないのだ。 「厳密にはそうじゃないかもしれないから」と、GDPの1%以上となる7兆円の損失を見過ごすのはバカのすることである。肩身が狭いからというだけで政府の喫煙対策を批判する人たちは、自分がそうしたバカな国に住んでいたら今頃どうなるか、と考えてみればいい。 疫学研究に反論したい人は、考えられる限り結果を歪めうる条件について指摘すればいい。そうすることによって、疫学研究が思わぬ落とし穴にはまって間違った結論を導く可能性は減らせる。だが、そうした指摘に対しても統計家がデータを揃えてきたのであれば、その結果は信頼したほうが現実的には有用である。バカのひとつ覚えのような「ランダム化ではないから〜」という批判は不毛そのものだ。それは疫学以外の、政策や教育、経営などに関わる統計学的な観察研究についても同様のことが言えるだろう。 ちなみに「New England Journal of Medicine」という世界で最も影響力のある医学雑誌に、2000年に「同じ因果関係を分析しようとする医学研究において、果たして疫学研究はランダム化比較実験と比べ劣るものなのだろうか?」というテーマの研究が掲載された。その趣旨は、90年代前半の主要な医学雑誌に掲載された論文を比較検討した結果、である。そして、その理由としては「高度な統計手法によって、適切な条件の調整を行なうことができているから」という考察がなされていた。
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