日本の企業におけるレガシーシステム問題:脱却を阻む要因と低位安定構造

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日本の企業におけるレガシーシステム問題:脱却を阻む要因と低位安定構造
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日本企業のITシステムにおけるレガシー化の現状を分析。外部パートナーへの依存、ITシステムの中身のブラックボックス化、多重下請け構造による低位安定といった課題を浮き彫りにし、DX(デジタルトランスフォーメーション)を阻む要因を解説。

こうした観点からレガシー化の経緯と脱レガシーが進まない現状を追う中で見えてきたのは、自社の ITシステム に関する主導権を手放し、外部パートナーと「 低位安定 」に陥る 日本企業 の姿だった。「欧米ではITとビジネスが一体不可分で、 ITシステム をビジネス成長の源泉であると見なす傾向にあります。市場を先に牛耳った企業が勝つというマインドから、事業を高度化させるためには、 ITシステム も生き物のように変え続けなければならない。だから欧米のユーザー企業には ITシステム のオーナーであるという意識が強いのです」転換点となったのが1990年代に進んだオープン化だ。メインフレームからオープン系システムやERPへの移行は、専門的なスキルを要する複雑な作業を伴う。ユーザー企業はその工程をベンダーに委ねるようになり、その後発生する機能の追加や変更もベンダーに受託開発という形で進むようになった。こうして ITシステム の"中身"を自社で把握できない状態になり、多くの企業が ITシステム 関連業務をシステム子会社、あるいは外部のベンダーに任せるといったいわゆる「丸投げ体質」になっていった。 木村氏は、1990年代初頭に起きたバブル経済の崩壊もこうした状況に「追い討ちをかけた」と見ている。もともと「コスト部門」として位置付けられていたIT部門は、真っ先にコストカットの対象となった。部門ごと情報システム子会社へ切り出されるケースや、外注への業務委託に切り替えるケースもあった。こうしてITに詳しい人材がユーザー企業から流出し、 ITシステム の開発や運用の受け皿としてシステムインテグレーター(SIer)が台頭することになった。 木村氏は レガシーシステム にまつわる問題の要因は「3+2」だと語る。「技術の老朽化」「システムの肥大化・複雑化」「システムのブラックボックス化」の3つの技術的要因と、「IT投資がされていない」「古い制度としがらみ」の2つの経営的要因が複雑に絡み合っているという。 「COBOLエンジニアが高齢化してリタイアし、保守費用が年々増えていく。ERP製品の保守期限が迫る。少子高齢化でエンジニアの総数が減る――。こういった問題が2025年前後に重なるというのが『DXレポート』で警鐘を鳴らした背景にありました」(木村氏)こうして ITシステム のレガシー化が進んだ。なお、本稿では経産省の定義に沿って、 レガシーシステム を「長い間刷新されていないために老朽化や複雑化、ブラックボックス化によってデータ活用や、AIをはじめとする新技術の適用が阻まれ、DXが阻害されている状態」と定義する。 問題はシステムだけにとどまらない。ユーザー企業とITベンダーの関係性にも変化が生じた。ユーザー企業がITベンダーに依存する「丸投げの構造」は、ユーザー企業・ITベンダー企業双方にとってある意味心地良い状態を生み出した。ユーザー企業は要望を言えばITベンダーがシステムを開発してくれる、ITベンダーは長期的に仕事を確保できる。木村氏はこの共依存状態は 低位安定 をもたらした、と分析する。 「受注が続く限り両者にとってWin-Winでした。ただし、ユーザー企業のビジネスが複雑化する中で、システムも複雑化していきます。また、開発に必要なリソースはフェーズによって変動が激しく、その変動に対応するためにITベンダーが必要な人員を外部から調達するようになり、多重下請け構造が生まれました。その結果、エンジニアのスキルは細分化され、各層でマージンは削られ、低利益率になっていきました。こうして仕事は確保できるけれども利益率は低い、言わば『 低位安定 』になってしまいました」(木村氏) この構造が固定化した結果、「 ITシステム に対する自律性の低下」「 ITシステム のブラックボックス化」「ベンダーロックインによって新技術の導入や事業転換の際にベンダーへの依存がネックになり、経営判断の自由度低下」がユーザー企業に蓄積された。 それでも「 ITシステム が何とか動いている」ことによって、これらの問題はあまり表面化しなかった。歪みが顕在化するのは、ITベンダーが人員不足に陥った時や法改正により短時間での対応が必要な時、あるいは新技術を入れようとした時だ。「1割でも2割でも、自分たちでできるところを増やす。まずIT資産の棚卸しと現状の可視化はユーザー企業が主導でできるでしょう。ユーザー企業が描いたITアーキテクチャのラフなスケッチを基に、ITベンダーが肉付けや具体化を担う。役割を分担することで、ITベンダーは得意領域に集中し、ユーザー企業は明確なオーダーを出せるようになる」(木村氏)しかし、ここに大きな壁がある。上流工程を担う人材が不足しているのだ。総括レポートが推計した2025年度のIT人材需給ギャップによれば、産業分野全体でのITベンダーの充足率は66%にとどまり、特にビジネスアーキテクトやITアーキテクトといった上流人材の充足率は63%と低い。木村氏は、上流人材が育たない構造的理由をこう説明する。「設計や実装、テストといった工程は、独学でも可能です。しかし、上流工程はビジネスの現場で、ステークホルダーとともに要求仕様を固めるといった実践経験なしには身に付きません」 だからこそ内製化が不可欠だ、と木村氏は指摘する。「若手を上流の現場にアサインして、経験を積ませる組織構造を整備することが欠かせません。『レガシーモダナイゼーション』とは単にシステムの刷新にとどまらず、組織の再設計も含まれています」 さらにモダナイゼーションには、優秀なデジタル人材を獲得する「呼び水」としての効果もあるというのが木村氏の持論だ。「大学でデータサイエンスやAIを学んだ学生が、事業会社に入ったらデータが散在していてAIを使えないことに幻滅してしまうケースは珍しくありません。モダンなアーキテクチャに刷新して最新技術を活用できる環境を整えることは、人材獲得の強力な武器にもなります」(木村氏)ここまで レガシーシステム の刷新がなかなか進まない理由を見てきたが、レガシー刷新を進めるために欠かせないのが経営層の決断だ。システム刷新の影響が全社に及ぶことや、予算規模が通常時にIT予算として割り当てている枠を超える可能性が高いこと、刷新プロジェクトにかかる期間が長期化する可能性があることなどがその理由だ。によると、 レガシーシステム を抱えているという項目を選択した回答者のうち約7割が刷新の必要性を感じている。しかし、「(勤務先で)レガシー刷新が喫緊の経営課題として位置付けられている」という項目を選択した回答者はわずか26.

2%にとどまった。アイティメディアの読者という限られた属性を対象にした調査であるため一般化はできないが、喫緊の経営課題には位置付けられていないと感じている層が過半数を占めることは、システム刷新プロジェクトがあまり進んでいない現状と符合(ふごう)するようでもある。 木村氏も、経営課題として位置付けることの重要性を強調する。しかし、「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」によると、中期経営計画に「大規模システムの導入・刷新」を記載しているユーザー企業はわずか12%にすぎない。システム刷新に着手するきっかけも、欧米と日本では大きく異なる。欧米では競合の動向や市場の変化を先読みした「自律的な意思決定」が多いのに対し、日本ではシステム障害の頻発や保守要員の確保困難といった「受動的な意思決定」が上位を占める。 木村氏はこの傾向を「"痛い目"に遭わなければ動かない、では遅い」と指摘する。「首都直下型地震がいつ来るかは分からなくても、壊れたら終わりだから耐震工事にお金をかける。ITシステムも『潰れてからでは遅い』という意識で先回りして取り組むべきです」 同じ危機感は、ITベンダーからも聞こえてくる。レガシーシステムモダン化委員会の委員を務め、IPAへの出向経験もある日立製作所の三部良太氏(研究開発グループ システムイノベーションセンタ デジタルエコノミー&コミュニティ研究部プロジェクトマネージャ《所属・役職名は取材時のもの》)は、日本企業の経営層の意識をこう表現する。経産省もITベンダーも、同じ「壁」を見ている。レガシー刷新が進まない問題の根は技術不足ではなく、経営層の意識と覚悟にある。 ITシステムに関して事後対応になりがちな背景として、木村氏は大企業経営者の構造的な問題を挙げる。「レガシーシステムの刷新問題は、最終的には経営者の覚悟とコミットメントに帰着します。2~3年で経営陣が替わる企業も珍しくない中で、自分の代で食い止める覚悟を持てるかどうかが問われています」 大企業のレガシー刷新は複数年に及び、着手後に停滞するケースも多い。中期経営計画にシステム刷新を明記し、複数年の予算を確保することが必須だ。木村氏はこう締めくくる。「ITシステムの問題はIT部門だけの問題ではなく、むしろ経営マターなのです」近年のAIブームによって、レガシーシステムを抱え続けるデメリットはより顕著になっている。データが散在し、システムが密結合状態にあるレガシー環境では、生成AIをはじめとする最新のデジタル技術との連携や組み込みがスムーズに進まない。生成AIの精度を向上させるための企業特有のデータを活用するのも難しくなる。つまりシステム刷新はリスクを回避するものであると同時に、AI活用の前提条件でもある。 「AI活用は"待ったなし"です」と木村氏も強調する。マルチモーダルが扱えるようになる中で、AIの活躍の場はデジタル世界の"外"にも広がろうとしている。「フィジカルやロボティクスとAIが融合し、ITエンジニア不足も深刻化する中で、AIと協調的なシステム開発手法が主流になるのはもう不可避です」(木村氏)アイティメディアが2026年3月に実施した読者調査(実施期間:2026年3月23~27日、回答数109件)によると、レガシーシステムを抱えるリスクに警鐘を鳴らす「2025年の崖」というフレーズの認知状況を尋ねる設問に対して、最も多く選ばれた回答は「名称だけ知っている」(37.6%)で、「聞いたことがない」(26.6%)が続いた。こちらもアイティメディアの読者調査であることに留意は必要だが、国がレガシー刷新の必要性を呼び掛けていると認識していない層がある程度のボリュームに達している可能性がある。 さらに、同調査で「2025年の崖」のメッセージがシステム刷新にもたらした影響を尋ねたところ、「特に影響はなかった」(40%)が最も多く選ばれた。「特に影響はなかった」と答えた回答者に警鐘が「ジブンゴト」として響かなかった理由としては、「足元の業務が回っている限り、刷新に伴うリスクやコストが忌避されるから」「国が示す指針が、自社のシステム実態に即していないと感じるから」に多くの票が集まった。

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