教育のデジタル化に対して、現場を任されている教員はどのように感じているのか。日本を含む6カ国の公立小中学校の教員を対象にアンケート調査した。教員は「アナログ回帰」しているのか?
教育デジタル化の1つの指標として、1人1台端末の整備率を調査した。国ごとに時期や程度に差はあるものの、全体として右肩上がりで推移している。このことから、教育のデジタル化が世界的な潮流となっていることがうかがえる(データ1)。 スウェーデンは長らく1人1台端末の整備率で他国をリードしてきたが、2019年以降、その状況に変化が見られた。コロナ禍での教育の継続などを背景に、多くの国が端末配備を進めたからだ。特に日本は公平性を重視し、GIGAスクール構想のもと政府が主体的に予算措置して整備を進めた。その結果、整備率はほぼ100%に達し、調査対象の6カ国ではトップとなった。一方で、端末の利用頻度を見ると、日本は授業で毎日利用している割合が46%で、6カ国中5位(データ2)となった。利用シーン別に細かくみると、米国は「児童生徒の特性や理解度などに合わせて課題に取り組む」の毎日利用が最も高い。多様性を重視し、地域や学校によってカリキュラムが異なるなど自由度が高いことも背景にあるとみられる。スウェーデンは「考えをまとめて発表・表現する」、シンガポールは「調べもの、教員や生徒同士のコミュニケーション」の利用頻度でトップとなり、国ごとの文化や教育制度の違いが、端末の活用方法にも表れているとみられる。日本はシーン別の利用頻度でトップとなるものはなかった。教科別の利用頻度、端末利用時間を見ても日本は調査対象国の中で低い水準にとどまった。別設問で授業における端末活用について聞くと「あまり活用できていない/全く活用できていない」が48%と調査対象国の中で最も高い割合で、デジタル教育への自信のなさが垣間見えた。 また、OECD(経済協力開発機構)の小原ベルファリゆり氏はデジタル教育のガイドライン策定にあたり、教員の声をうまく反映することが重要と指摘している。他国は「現場の声が反映されている」との回答が6~9割程度なのに対し、日本は5割未満であった。日本では政府主導で一気呵成にインフラ整備を進めたものの、教育現場の理解や納得を伴ったデジタル教育の実現は、依然として途上にあることがうかがえる。世界的なデジタル教育推進 教員は「アナログ回帰」しているのか? ここまでのデータを見ると、わずか5~10年の間に、デジタル教育は研究者が実験的に活用する段階から、日常的に活用される段階へと移行してきた。政策的な後押しもあり、現場では急激な変化への対応を求められたが、意外にも教員はデジタル教育に前向きな評価をしている。 これまでデジタル教育を積極的に取り入れてきたスウェーデンでは、学習意欲、多様な学習教材・機会の提供から、理解度、成績まで「良い効果があった」との声が半数以上を占め、悪化したとの回答は最大で1割程度と少数派であった(データ3)。同グラフには示していないが、児童生徒に対する効果だけでなく、教員自身にとっても授業準備の負担軽減や学習状況の把握といった面で効果があるとの結果も出ている。政策的にはアナログ回帰を始めたスウェーデンでも、現場の教員からすれば「デジタル教育は多様な側面で良い効果をもたらすもの」として捉えられているようだ。他国でも同様の傾向が見られた。 日本では利活用がこれから本格化する段階のため、他国と比べると全体的に低い水準となったが、学習意欲、共同学習、多様な学習教材・機会の提供など比較的早い段階で効果を実感しやすい点が、特に高く評価されている。ただし、何でもかんでもデジタル化すればよいというわけではなさそうだ。教科書や教材の今後の在り方について「紙とデジタルの両方のハイブリッドとするべき」との意見が70~90%弱と、6カ国全てで多数を占めた(データ4)。自由回答欄の中で、例えばスウェーデンでは以下のようなコメントが多数見られた。Det finns manga fordelar, men man behover aven den traditionella undervisningen.
Tex: skriva for hand etc.(多くの利点はあるが、伝統的な授業も必要。例えば手書きなど) Finns manga mojligheter med datorer men skarmtid kan ibland forvarra inlarningen. Ibland behovs en vanlig bok. Dock ar tillgangligheten bra.(コンピューターには多くの可能性があるが、スクリーンを使うことで学習効果が落ちることもある。普通の本が必要なこともある。しかし、情報へのアクセシビリティは良い)今後、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド型」の教育が主流となる中で、教員自身のデジタル活用力の底上げは不可欠だ。特に近年では、生成AIをどのように教育現場に取り入れるかが重要な課題となっている。 未成年のAI利用には、情報リテラシーや倫理、法制度、心理的・発達的な観点からさまざまなリスクが伴う。そのため、教員自身がAIに対する理解を深め、実際に使ってみることが、児童生徒の適切な利用を指導するうえで不可欠だと言える。 調査結果を見ると、海外では教員の約7~9割が「業務で生成AIを活用している」と回答した一方で、日本では約3割にとどまった(データ5)。生成AIの活用は、単に業務の効率化にとどまらず、今後のガイドラインや政策立案において教員の声を反映させるうえでも重要である。まずは一度、生成AIを体験してみることで、可能性と課題の両面を実感できるはずだ。
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