言語哲学者の藤川直也氏(45)=東大大学院総合文化研究科准教授=が、著書「誤解を招いたとしたら申し訳ない」(講談社、2420円)で、政治家の言葉遣いなどを例に挙げながら、言葉の本質について論評してい
言語哲学者の藤川直也氏(45)=東大大学院総合文化研究科准教授=が、著書「誤解を招いたとしたら申し訳ない」(講談社、2420円)で、政治家の言葉遣いなどを例に挙げながら、言葉の本質について論評している。「永田町」、「霞が関」で横行する“謝罪もどき”、責任回避の言葉は国境を越え、SNSの世界でも広がっている。国家、民族などの分断を生む言説がはびこる現状を変えていくことはできるのか。処方箋はあるのか。(久保 阿礼)「一番身近で、かつ皆が見ている言葉。それが政治家の言葉でした」「精神医学者アーロン・ラザールは、こうした表現を『謝罪もどき』と呼びました。謝罪するそぶりを見せつつ、実質的には逃げている。責任を果たすどころか、謝罪に伴う責任を回避する装置として機能しているのです」「意味の操作を堂々と行い、言葉の力をないがしろにする態度が透けて見えました。言葉の責任が軽んじられる風潮は、米国のトランプ大統領にも通じます。間違いを指摘されても『フェイクニュース!』と連呼し、自分に都合の良い言葉だけを繰り返す。こうした現象は世界的に見ても拡大しています」「日常生活で『仮定の質問には…』なんて言ったら異様ですよね。たとえば、妻に『明日、雨だったらどうする? 』と聞かれて『仮定の質問には答えられない』と返したら、普通は会話が成り立たない。外交や安全保障のような特殊な場面ならともかく、自身の政治資金の使途までこうした言い回しで逃げるのは、誠実さに欠けます」「言質を与えないように発言を避ける“予防線型”から、与えた言質などないかのように振る舞う“踏み倒し型”への移行です。(公職選挙法違反などでメディアから追及されている)斎藤元彦知事は『真摯(しんし)に受け止める』を多用しますが、行動が伴わなければ、言葉の責任の踏み倒しになってしまいます。言葉だけで終わった“つもり”になる危うさがあります。不利な指摘を『フェイクニュース』『捏造(ねつぞう)』と断じ、開き直る“攻撃型”も目につきます。こうした態度は、借金しておいて『借りたっけ?』ととぼける、借用書を突きつけられても『オレの字じゃない』と否定するようなものです。しかも、その態度に共感する層が一定数います。こうしたごまかしが、言葉の信頼を蝕(むしば)んでいます」 これらの言説を説明する比喩として、「犬笛」と「イチジクの葉」という言葉がある。「犬笛」は表面的には普通の発言だが、特定の集団にだけ意味が伝わる暗号のような言葉。「イチジクの葉」は「外国人の友人がいるんですが」などの前置きで排外的発言を正当化するレトリックだ。2020年の米大統領選後、トランプ氏は「議事堂へ向かおう」と支持者に呼びかけた。これにより議会襲撃が発生したことを「典型的な犬笛」と見る。 「彼は『平和的に行進するよう言っただけ』と釈明しています。事実そう言ってもいるのですが、文脈を見れば、あの発言が何を促したかは明白です。表面の字面ではなく、言葉と責任の関係性を見る力が必要です。熱狂的な状態では論理や責任が吹き飛び、言葉が煽動の道具になり得ます」「政治家ら著名人であれば、過去の発言と照らし合わせて実績を確認する。発言の背景にある利害関係を探ることが大切です。個々人のリテラシーを高めるのはもちろんですが、限界もあります。SNSなどのプラットフォームの責任、法的な制度設計も不可欠でしょう」「悪意によって言葉が捻じ曲げられ、社会を壊すこともある。でも逆に、良い意思が良い言葉を生み、それが社会を少しずつ良い方向に導くこともある。言葉を“公共インフラ”として整備することの大切さを伝えたかったですね」「分断を嘆くより、橋渡しになるような言葉を探す。それが今、社会に求められていることだし、哲学者の役割かもしれません」1980年1月21日、三重県生まれ、大阪育ち。45歳。京大大学院文学研究科後期博士課程修了、博士(文学)。現在、東大大学院総合文化研究科准教授。最近の関心は、言語科学基礎論と応用言語哲学。著書に「名前に何の意味があるのか―固有名の哲学」(勁草書房)など。.
言語哲学者の藤川直也氏(45)=東大大学院総合文化研究科准教授=が、著書「誤解を招いたとしたら申し訳ない」(講談社、2420円)で、政治家の言葉遣いなどを例に挙げながら、言葉の本質について論評している。「永田町」、「霞が関」で横行する“謝罪もどき”、責任回避の言葉は国境を越え、SNSの世界でも広がっている。国家、民族などの分断を生む言説がはびこる現状を変えていくことはできるのか。処方箋はあるのか。(久保 阿礼)「一番身近で、かつ皆が見ている言葉。それが政治家の言葉でした」「精神医学者アーロン・ラザールは、こうした表現を『謝罪もどき』と呼びました。謝罪するそぶりを見せつつ、実質的には逃げている。責任を果たすどころか、謝罪に伴う責任を回避する装置として機能しているのです」「意味の操作を堂々と行い、言葉の力をないがしろにする態度が透けて見えました。言葉の責任が軽んじられる風潮は、米国のトランプ大統領にも通じます。間違いを指摘されても『フェイクニュース!』と連呼し、自分に都合の良い言葉だけを繰り返す。こうした現象は世界的に見ても拡大しています」「日常生活で『仮定の質問には…』なんて言ったら異様ですよね。たとえば、妻に『明日、雨だったらどうする? 』と聞かれて『仮定の質問には答えられない』と返したら、普通は会話が成り立たない。外交や安全保障のような特殊な場面ならともかく、自身の政治資金の使途までこうした言い回しで逃げるのは、誠実さに欠けます」「言質を与えないように発言を避ける“予防線型”から、与えた言質などないかのように振る舞う“踏み倒し型”への移行です。(公職選挙法違反などでメディアから追及されている)斎藤元彦知事は『真摯(しんし)に受け止める』を多用しますが、行動が伴わなければ、言葉の責任の踏み倒しになってしまいます。言葉だけで終わった“つもり”になる危うさがあります。不利な指摘を『フェイクニュース』『捏造(ねつぞう)』と断じ、開き直る“攻撃型”も目につきます。こうした態度は、借金しておいて『借りたっけ?』ととぼける、借用書を突きつけられても『オレの字じゃない』と否定するようなものです。しかも、その態度に共感する層が一定数います。こうしたごまかしが、言葉の信頼を蝕(むしば)んでいます」 これらの言説を説明する比喩として、「犬笛」と「イチジクの葉」という言葉がある。「犬笛」は表面的には普通の発言だが、特定の集団にだけ意味が伝わる暗号のような言葉。「イチジクの葉」は「外国人の友人がいるんですが」などの前置きで排外的発言を正当化するレトリックだ。2020年の米大統領選後、トランプ氏は「議事堂へ向かおう」と支持者に呼びかけた。これにより議会襲撃が発生したことを「典型的な犬笛」と見る。 「彼は『平和的に行進するよう言っただけ』と釈明しています。事実そう言ってもいるのですが、文脈を見れば、あの発言が何を促したかは明白です。表面の字面ではなく、言葉と責任の関係性を見る力が必要です。熱狂的な状態では論理や責任が吹き飛び、言葉が煽動の道具になり得ます」「政治家ら著名人であれば、過去の発言と照らし合わせて実績を確認する。発言の背景にある利害関係を探ることが大切です。個々人のリテラシーを高めるのはもちろんですが、限界もあります。SNSなどのプラットフォームの責任、法的な制度設計も不可欠でしょう」「悪意によって言葉が捻じ曲げられ、社会を壊すこともある。でも逆に、良い意思が良い言葉を生み、それが社会を少しずつ良い方向に導くこともある。言葉を“公共インフラ”として整備することの大切さを伝えたかったですね」「分断を嘆くより、橋渡しになるような言葉を探す。それが今、社会に求められていることだし、哲学者の役割かもしれません」1980年1月21日、三重県生まれ、大阪育ち。45歳。京大大学院文学研究科後期博士課程修了、博士(文学)。現在、東大大学院総合文化研究科准教授。最近の関心は、言語科学基礎論と応用言語哲学。著書に「名前に何の意味があるのか―固有名の哲学」(勁草書房)など。
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