こちらは、学校現場を変える「ギガスクール構想」、経済界の関心のページです。日刊工業新聞社のニュースをはじめとするコンテンツを、もっと新鮮に、親しみやすくお届けするサイトです。
デジタル変革(DX)による新たな教育システムが構築されつつある。政府は小中学生に1人1台の端末を配備する「ギガスクール構想」を推進する。端末や高速通信網などの情報通信技術(ICT)環境の整備を急ぐ一方、先端技術を利用した教材や学習手法の導入、それに伴う人材の育成が急務となっている。次世代の教育手法は学校現場をどう変えるのか。(冨井哲雄、飯田真美子、編集委員・池田勝敏)超スマート社会「ソサエティー5・0」の実現に向け、あらゆる分野でICT化が進んでいる。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、政府は2020年2月、全国の小中学校、高校などに休校を要請。コロナ禍で教育分野のデジタル化の遅れが顕在化し、学校間の格差の広がりが指摘された。これに伴い、パソコンやタブレット端末を利用したオンライン授業が普及し、教育のデジタル化が一気に加速している。 教育現場のDXに向け、文部科学省は児童・生徒に1人1台の端末配備と、高速大容量通信ネットワークの構築を目指す「ギガスクール構想」を掲げる。経済産業省も教育と科学技術を組み合わせた「EdTech(エドテック)」関連サービスを手がける企業への補助金事業を展開するなど、政府全体で教育イノベーションを後押しする。 ICT環境の整備により、必要な情報を共有し議論する「グループ学習」の実施、子どもの理解度に合わせた個人学習を支援する人工知能(AI)型ドリル教材やオンライン英語教材などの導入が期待される。さらに端末を持ち帰り家庭で授業を受けられるなど、場所や時間を問わずに子どもの学びを保証できる仕組み作りにもつながる。萩生田経産相(右)提言書を手渡した南場経団連副会長(昨年10月15日=経産省) 経済界もギガスクール構想に強い関心を示す。経団連は21年10月、緊急提言をまとめ、萩生田経産相に建議した。その際、南場智子経団連副会長(ディー・エヌ・エー会長)は「成長のためにはスタートアップエコシステムの強化により新産業を創出することが重要であり、人材育成がそのカギとなる」とした上で、初等中等教育から高等教育、リカレント教育(学び直し)まで一貫した改革が急務だと訴えた。改革のカギとなるのが、ICTやエドテックなどを利用した教育環境の整備だ。一方、経産省は18年度から先行的な取り組みとして、1人1台端末とエドテックを活用した新しい学びを実証する「未来の教室」を開始。20年度からは教育現場にエドテックを試験導入する事業者に対し、経費を補助する制度を始めた。学校や要件を満たしたフリースクールでは年度末まで、無料でエドテックを試験活用できる。20年度実績で企業やコンソーシアムなど68件、小中高などの教育機関4030校で採択された。 学校現場では「資金不足により、良質な教育アプリケーション(応用ソフト)やコンテンツを使うことができず、十分な教育効果を上げられていない現状がある」(経団連)。ハード面での環境整備だけでなく、ソフトウエアやコンテンツの充実が不可欠。ユーザーとなる学校への導入支援はますます重要になる。課題も分かってきた。経団連の提言では、小中学生1人1台端末の整備が前倒しでほぼ完了したことを評価する一方、「端末の本格的な活用に向けてさまざまな課題が明らかになっている」と指摘する。 現状で公立高校はICT化に対応しきれていない。経団連は高校生の1人1台端末の整備の重要性を提言にまとめている。データ分析やAI活用などのスキルを高校在学中に習得できるよう、高校でも小中学校と同水準のパソコンやタブレット端末の整備を22年度前半までに完了すべきだとしている。「新型コロナ感染が広がる中で、対策は一刻の猶予も許されない」(経団連)と政府に早急な対応を迫る。 高校では4月から基礎的なプログラミングの授業が必履修科目となるため、文科省は高校での1人1台端末の整備を各自治体に促す。末松信介文科相は「小中学校で端末による学習に慣れた子どもが、高校に進学した際にも同様の環境で学べる仕組みが必要」との認識を示す。 ICTに対応できる現場の人材育成も欠かせない。ギガスクール構想を標準の教育にするためには、ICTを活用し指導できる教員の育成が急務になる。萩生田経産相は「教員が端末の利用にたけておらず、教え方に苦労している。経産省ではそれらを埋めるべく、エドテック導入のモデル地域を増やしている」と強調。「今後、モデル地域での優良事例や教え方などが多く出てくるだろう。こうした事例を横展開することで教育効果を高められる」と期待する。文科省は国際宇宙ステーション(ISS)や南極・昭和基地と学校現場を通信でつなぎ、極地での実験や観察といった授業を21年秋に実施した。 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の星出彰彦さんはISS滞在中に、全国の小学生と交信する特別授業を開いた。テーマは「宇宙での水や食べ物の動きと食事」。宇宙空間では水が丸くなって浮く様子を紹介したほか、コーヒーと牛乳が混ざるかといった実験を行った。ISSから授業を行う星出さん(中央画面=JAXA提供).
デジタル変革(DX)による新たな教育システムが構築されつつある。政府は小中学生に1人1台の端末を配備する「ギガスクール構想」を推進する。端末や高速通信網などの情報通信技術(ICT)環境の整備を急ぐ一方、先端技術を利用した教材や学習手法の導入、それに伴う人材の育成が急務となっている。次世代の教育手法は学校現場をどう変えるのか。(冨井哲雄、飯田真美子、編集委員・池田勝敏)超スマート社会「ソサエティー5・0」の実現に向け、あらゆる分野でICT化が進んでいる。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、政府は2020年2月、全国の小中学校、高校などに休校を要請。コロナ禍で教育分野のデジタル化の遅れが顕在化し、学校間の格差の広がりが指摘された。これに伴い、パソコンやタブレット端末を利用したオンライン授業が普及し、教育のデジタル化が一気に加速している。 教育現場のDXに向け、文部科学省は児童・生徒に1人1台の端末配備と、高速大容量通信ネットワークの構築を目指す「ギガスクール構想」を掲げる。経済産業省も教育と科学技術を組み合わせた「EdTech(エドテック)」関連サービスを手がける企業への補助金事業を展開するなど、政府全体で教育イノベーションを後押しする。 ICT環境の整備により、必要な情報を共有し議論する「グループ学習」の実施、子どもの理解度に合わせた個人学習を支援する人工知能(AI)型ドリル教材やオンライン英語教材などの導入が期待される。さらに端末を持ち帰り家庭で授業を受けられるなど、場所や時間を問わずに子どもの学びを保証できる仕組み作りにもつながる。萩生田経産相(右)提言書を手渡した南場経団連副会長(昨年10月15日=経産省) 経済界もギガスクール構想に強い関心を示す。経団連は21年10月、緊急提言をまとめ、萩生田経産相に建議した。その際、南場智子経団連副会長(ディー・エヌ・エー会長)は「成長のためにはスタートアップエコシステムの強化により新産業を創出することが重要であり、人材育成がそのカギとなる」とした上で、初等中等教育から高等教育、リカレント教育(学び直し)まで一貫した改革が急務だと訴えた。改革のカギとなるのが、ICTやエドテックなどを利用した教育環境の整備だ。一方、経産省は18年度から先行的な取り組みとして、1人1台端末とエドテックを活用した新しい学びを実証する「未来の教室」を開始。20年度からは教育現場にエドテックを試験導入する事業者に対し、経費を補助する制度を始めた。学校や要件を満たしたフリースクールでは年度末まで、無料でエドテックを試験活用できる。20年度実績で企業やコンソーシアムなど68件、小中高などの教育機関4030校で採択された。 学校現場では「資金不足により、良質な教育アプリケーション(応用ソフト)やコンテンツを使うことができず、十分な教育効果を上げられていない現状がある」(経団連)。ハード面での環境整備だけでなく、ソフトウエアやコンテンツの充実が不可欠。ユーザーとなる学校への導入支援はますます重要になる。課題も分かってきた。経団連の提言では、小中学生1人1台端末の整備が前倒しでほぼ完了したことを評価する一方、「端末の本格的な活用に向けてさまざまな課題が明らかになっている」と指摘する。 現状で公立高校はICT化に対応しきれていない。経団連は高校生の1人1台端末の整備の重要性を提言にまとめている。データ分析やAI活用などのスキルを高校在学中に習得できるよう、高校でも小中学校と同水準のパソコンやタブレット端末の整備を22年度前半までに完了すべきだとしている。「新型コロナ感染が広がる中で、対策は一刻の猶予も許されない」(経団連)と政府に早急な対応を迫る。 高校では4月から基礎的なプログラミングの授業が必履修科目となるため、文科省は高校での1人1台端末の整備を各自治体に促す。末松信介文科相は「小中学校で端末による学習に慣れた子どもが、高校に進学した際にも同様の環境で学べる仕組みが必要」との認識を示す。 ICTに対応できる現場の人材育成も欠かせない。ギガスクール構想を標準の教育にするためには、ICTを活用し指導できる教員の育成が急務になる。萩生田経産相は「教員が端末の利用にたけておらず、教え方に苦労している。経産省ではそれらを埋めるべく、エドテック導入のモデル地域を増やしている」と強調。「今後、モデル地域での優良事例や教え方などが多く出てくるだろう。こうした事例を横展開することで教育効果を高められる」と期待する。文科省は国際宇宙ステーション(ISS)や南極・昭和基地と学校現場を通信でつなぎ、極地での実験や観察といった授業を21年秋に実施した。 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の星出彰彦さんはISS滞在中に、全国の小学生と交信する特別授業を開いた。テーマは「宇宙での水や食べ物の動きと食事」。宇宙空間では水が丸くなって浮く様子を紹介したほか、コーヒーと牛乳が混ざるかといった実験を行った。ISSから授業を行う星出さん(中央画面=JAXA提供)
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