「完璧である必要はない。重要なのは革新的であること」──『GQ』11月号のカバーストーリーで、ビヨンセ・ノウルズ=カーターがビジネス、レガシー、アート、家族について語る。
ビヨンセの快進撃が止まらない。 今年の春にリリースされた8枚目の最新スタジオアルバム『カウボーイ・カーター』の中盤、鳴り響くアラームと轟くビートの中で、このプロジェクトのミッション・ステートメントを明確にする語りが入る。ひとつの枠に収まらない、幅広いクリエイティビティを持った アーティスト にとって、ジャンルという概念は束縛でしかないという宣言である。そして歌い出すビヨンセは、自らをサノスになぞらえる。ひとつの統合されたスーパーパワーを手に入れるために、神秘的な力を秘めた6つの石を探し求めるマーベル映画のヴィランだ。 ミュージックビデオは作られていなくても、歌詞から呼び起こされるビジュアルは強烈だ。眩いガントレットをはめたビヨンセが、30年のキャリアを通して業界が彼女に押し付けようとしたあらゆる壁、レッテル、苦境を打ち壊すイメージである。 これはビヨンセが過去10年、特にここ数年の間取り組んできた多くのことに当てはまるテーマだ。ロデオであれ、アメリカの大平原であれ、汗臭いボールルームのダンスフロアであれ、黒人の影響力の重要性が矮小化されてきた場においてブラックネスを再び中心に据え、その存在を再認識させるという使命である。 プロジェクトの推進力となったのはレガシーだ。前へと進む一歩一歩が、過去を振り返ることによって照らし出された。彼女自身のルーツを辿る、時間の旅である。同時にそれは、彼女の家系は大きな森のひとつの木に過ぎず、全てはお互いに繋がっているという理解をもたらした。彼女が何をするにも壮大なものに感じられるのはそのせいだ。カントリーの影響を受けた新アルバムも、ただジャンルの制約を取り払うというだけのものではない。忘れ去られた先人たちを讃え、真の系譜を探求するための歴史教育の場でもあるのだ(先述のジャンルに対する批判の声は黒人カントリーの先駆者、リンダ・マーテルによるものである。彼女もまた、ビヨンセが直面したのと同じ反発を経験した)。 彼女の音楽、そしてそれ以外の活動に、ほかの多くの セレブ に期待される以上の重みがあるのはそのためだ。例えば、7月下旬にカマラ・ハリス副大統領が初の大統領選挙キャンペーンのサウンドトラックに「Freedom」を採用したことは、画期的であると同時に必然にも感じられた。ビヨンセの歌声と歌詞が、政治の新たな動きを告げているようだった。そして、さらにそこに登場したのが「SirDavis(サーデイヴィス)」である。ビヨンセ・ノウルズ = カーターが自らを創業者として、 ウイスキー ビジネスに参入したのだ。それも、男らしさの概念に挑戦し、それを覆すという、最もビヨンセらしいやり方で。数ある蒸留酒のなかで最も男らしい酒を、現代の最もビッグな女性エンターテイナーが、先人たちに敬意を表しながら手がけたというわけだ(モエ・ヘネシーとのパートナーシップで誕生したサーデイヴィスは、彼女の曽祖父デイヴィス・ホーグにちなんで名付けられた。また、アメリカで一般的な「Whiskey」ではなく、日本やスコットランドで見られる「e」をつけない「Whisky」の綴りが意図的に選ばれている)。彼女の活動全てに通じるように、それは継承されたものであり、質が高く、完璧に練り上げられたものである。それも黒人女性として、年配の白人男性が専有していると思われた領域においてのことだ。 現在43歳のビヨンセは自身のイメージや肖像、音楽、ビジネスに、稀有なコントロール能力を幾度となく発揮してきた。ビジネスでもアートでも、彼女はルールを破ることで未知の領域に入り込み、後続に対して新たな規範を示し、新たな機会を拓いてきた。彼女に征服できないフロンティアはなく、もはや彼女の手に届かないものはないようですらある。冒頭で言及した曲のヴァースはこう締めくくられている。「I ain’t no regular singer, now come get everythin’ you came for(私は普通の歌手じゃない。さあ、私に求めるもの全てを手にしなさい)」。それでも、不思議に思うことはまだたくさんある。30年以上のキャリアで、もう証明すべきことなど何も残っていないなか、何が今も彼女を動かし続けているのだろうか? 批評家絶賛のアルバム、大型ツアー、ダイナミックなコンサート記録映画の間にいる彼女は、いったい何者なのだろうか? 私たちはこの夏、メールを通じて行った広範なやりとりの中で、その貴重な一端を垣間見ることができた。 ──今、どこにいますか。今日は何をしていたのでしょうか? 今日は東海岸にいて、夏の日差しを楽しんでいます。 普段は朝6時頃に起床して、子どもたちが起きる前に1、2時間仕事を入れるようにしています。仕事の合間に子育てをしながらの歩みです。その美しさと混沌を抱きしめながらね。 我が家にはいとこや友人たちがいっぱいいて、いきなり始まるタレントショーやドミノ倒しの音で賑やかです。私は健康に気を配るようにしていて、サプリメントの摂取やクリーンな食生活を心がけてきました。この夏は七面鳥以外の肉類を断ったんですよ。ワークアウトをする気力を奮い起こそうとしていますが、今日は無理。明日はできるかもね。アハハ! ──この春、新しいアルバムをリリースしましたね。作品について、またそれがあなたの過去作とどう関わりがあるかについて、多くの質問があります。でも、まずは新しい話題から始めましょう。 ウイスキー です。なぜお酒なのでしょうか? 初めて ウイスキー を飲んだ日のことは忘れられません。優しく私に訴えてきました。「なぜ今まで飲んだことがなかったのか」と思ったのを憶えています。口当たりは強くて温かくて、ちょうどいいハードさで。私はそのプロセス、飲み方が気に入りました。 ウイスキー はただぐいっと飲み干すものではなく、コミットメントなのです。忍耐が必要なもので、そこがいい。それから日本のヴィンテージ ウイスキー にハマって、テイスティングを始めると、新しい世界が広がりました。 ウイスキー の全てが好きです。色、香り、グラスの中で踊るさま……。そして、その一杯にまつわる物語も。どのボトルにも歴史がありますからね。自分が ウイスキー 好きだとまだ気づいていない人たちに ウイスキー を紹介するのも楽しいです。 ウイスキー を味わって、その世界に触れさえすれば、もっと多くの女性が好むようになるのではと思います。 ウイスキー は煙たいバーにいる年配男性だけではなく、深みと複雑さ、そしてちょっとした神秘を愛する全ての人のためにあるもの。熟成のプロセスは、穀物の発芽から手作りの樽に至るまで、全ての工程に注意を向けた奉仕であり、その全てを愛おしく思っています。 ウイスキー 造りはひとつの芸術で、私が愛と敬意を抱くのもそのためなのです。偉大な(カントリー歌手の)ウィリー・ネルソンはかつて言いました。「誰かに本当にいいものを教えられるまで、自分がそれを好きだったことに気づかないこともある」。だから未来の ウイスキー 愛好家の皆さん、どういたしまして! ──あなたの最新アルバムが、『カウガール・カーター』ではなく『カウボーイ・カーター』と題されているのが興味深いですね。本作、そして今度の「サーデイヴィス」(訳注:「サー」は男性の称号)という名称を通して、ジェンダーや人種について何を語ろうとしているのでしょうか。 カウボーイという言葉について、人々にちょっと調べてほしいと思ったのです。多くの場合、歴史は勝者によって語られます。アメリカの歴史といったら、それは延々と書き換えられてきたでしょう? カウボーイの4分の1は黒人でした。自分たちを同等に扱おうとしない世界に直面した彼らも、牧畜業を支える存在だったのです。 カウボーイはアメリカにおける強さと野望の象徴ですが、牛を扱う奴隷がその名の由来です。カウ“ボーイ”というのは、子ども扱いされ、相応の敬意を払われることのなかった彼らのことなのです。牛を扱う黒人をあえて「ミスター」や「サー」と呼ぶ者はいませんでした。私にとって、「サーデイヴィス」は勝ち取った敬意の証です。私たちは皆、敬意を払われてしかるべきです。私たちが敬意を示した場合は特にね。 酒造りは、私の家系のような南部の家庭で何世代にもわたって行われてきました。ジャックダニエルの有名なレシピは、ネイサン・“ニアレスト”・グリーンという黒人の影響を強く受けています。もとは奴隷で、その後ジャックダニエルのマスターディスティラーになった人物です。現在、彼の名を冠した美味しいプレミアム ウイスキー 「アンクルニアレスト」がありますが、経営はニアレスト・グリーンの曽孫であるヴィクトリア・イーディ・バトラーとフォーン・ウィーヴァーという2人の女性によってなされています。ミスター・ニアレストが始めたことを忠実に受け継いだヴィクトリアは、アメリカ・ ウイスキー 界初の黒人女性マスターブレンダーのひとりとなりました。 この物語が、ヴィクトリアやフォーン、そして私の物語とともに、新たな扉を開き続けることを願っています。 ──黒人女性として、あなたが成功することはないという人もいたであろうビジネスにおける経験はどのようなものでしたか。 男性と女性の間には、ビジネスの過程にも大きな差があります。しばしば男性はベンチャーの戦略家、頭脳として認識されるという特権的な扱いを受け、製品やチーム、ビジネスプランに集中する余裕が与えられています。一方で女性、特に名の知れた女性は、ブランドの顔やマーケティングツールに過ぎないと見なされがちです。私が音楽と同じアプローチで、学んだことをビジネスに応用していくことは私にとって重要なことなのです。 私はそのような古い物語を変えたい。品質にフォーカスしたい。私たちは時間をかけて研究を重ね、ブランドに対する敬意を勝ち得ました。私は近道よりも精進を選ぶようにしています。真の成功とは名前に頼ることではなく、純粋にその品質だけで勝負できる本物を作り上げることだと学びました。完璧である必要はありません。重要なのは革新的であることなのです。 ──『カウボーイ・カーター』は、あなたが2年前に『ルネッサンス』で始めた3部作の2作目です。3枚のレコードでそれぞれ異なるジャンルを探求するという、壮大なアイデアのきっかけは何だったのでしょうか。 『カウボーイ・カーター』は5年ほど前に始めました。「16 Carriages」の歌詞に出てくる私の年齢に注目してみてください。 キャリアをスタートさせた当初から、どのアルバムでも、私は常にジャンルをミックスしてきました。R&B、ダンス、カントリー、ラップ、ザディコ、ブルース、オペラ、ゴスペル。どれも何らかの形で私に影響を与えており、お気に入りの アーティスト もあらゆるジャンルにいます。ジャンルとは私たちを閉じ込め、分離させる罠だと私は考えていますが、それは音楽業界で25年間、私が経験してきたことなのです。しかし、黒人やその他の有色人種 アーティスト は、昔から様々なジャンルを創造し牽引してきました。 『カウボーイ・カーター』の「Daughter」という曲で、シュヴァリエ・ド・サン = ジョルジュとして知られる(アフリカ系の)作曲家ジョゼフ・ブローニュをサンプリングしたのは、私にとって重要なことでした。『ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品3第1番:第2楽章 アダージョ』は1700年代に作られた曲で、シュヴァリエのビジョンの証でもあります。ファンだけでなく アーティスト たちにとっても、先達である革新的な黒人音楽家たちについて、より深く掘り下げて学ぶきっかけになればと思います。才能ある アーティスト も、特に常識を覆すような存在である場合、メインストリームではしかるべき評価を得られないことがありますからね。 「Texas Hold ’em」のような曲が世界的に受け入れられたのには、とても興奮しました。さらにエキサイティングだったのは、この曲が音楽、ファッション、アート、カルチャーを横断してカントリーというジャンルを再活性化したこと。それに、シャブージーやタナー・アデル、ウィリー・ジョーンズ、ブリトニー・スペンサー、ティエラ・ケネディ、レイナ・ロバーツといった素晴らしい才能を世界に紹介できたことも。 ──今年初めには、ヘアケアライン「Cécred(セクレド)」も立ち上げましたね。ビジネスへの関心を高めているようですが、起業家としての活動は、クリエイティブな追求とは異なるツボを刺激するのでしょうか。 私はまず第一にミュージシャンです。いつでも、それが私の最優先事項でした。初恋の相手である音楽を自分のものにできたと感じるまでは、自分の芸術性を奪うようなことには手を出したくなかったのです。 セクレドを立ち上げたとき、私はこのブランドが人々の髪のために現実に何ができるのかという点で認めてもらいたいと思いました。ローンチの際、私が意識的に広告に登場しないことにしたのはそのためです。ブランドの第一印象は、私の影響力に関係なく、ブランドそのものの実力に立脚する必要があったからです。私はこれらの製品を何年も使ってきたので、その魔法のような力を肌で感じています。 ──数々のアルバムからフェスティバルのヘッドライナー、ツアー、新しいビジネスまで、あなたがプロとして行っていることの多くが、多大な集中力と努力を必要としているのは明らかです。ご自身で成長を続けながら、お子さんも大きくなるなか、あなたの活動に要求される膨大な努力や期待、そして人生を楽しむオフの時間の間で、どのように折り合いをつけているのでしょうか。 私たちが今生きているのは、何にでもアクセスできる世界。膨大な情報へのアクセスがあります。事実でも、真実を装ったデタラメでもね。子どもたちはFaceTimeで好きなときに友達と会えます。でも、夫と私はどうだったか。私たちが恋に落ちたとき、使っていたのはテレホンカードとSkypeでした。ホテルの国際通話料金は私には払えなかったので、国際電話がかけられるカードを手に入れて彼に電話をかけていたんです。つい最近、生成AIの曲を聴いたのですが、あまりにも私にそっくりで怖くなりました。何が本当で何が嘘なのかを正しく判断するのは、不可能になってしまいました。 私が一生懸命取り組んできたことのひとつは、子どもたちをできるだけ普通の環境に置いてプライバシーを保てるようにすること。それと、私の私生活自体がブランドにならないようにすることです。 セレブ が自分の生活をパフォーマンスアートにするのはとても簡単なことですが、私は自分の境界線に忠実であり続け、自分自身と家族を守るために努力してきました。どれだけのお金があっても、心の平安には代えられません。 ──あなたは完璧主義者として有名です。あなたがリリースする全ての作品からそれが伝わりますし、『ホームカミング』や『ルネッサンス』のような記録映画にも表れています。しかし、それが重責だとか、あるいは牢獄のように感じられることはあるのでしょうか。過去作の高評価によって上がったハードルに、圧倒されてしまうことはないのでしょうか? 私は自分のペースで、人々の心に響いてほしいと思うものを創作しています。私の作品を通して、人々が自分自身の内面を見つめ、自分自身の創造性、強さ、レジリエンス(精神的回復力)と向き合うきっかけになればと願いながら。私が重点を置いているのは物語性、成長、クオリティ。完璧かどうかにはこだわらず、進化、革新、価値観の転換にフォーカスしています。『カウボーイ・カーター』での音楽制作や、エキサイティングな新プロジェクトを立ち上げることは、牢獄にも重荷にも感じられません。実際、私は自分を解放してくれることにしか取り組んでいないのです。たまに牢獄のように感じられるものがあるとすれば、それは名声。レッドカーペットで私を見かけないときも、発表したいアートができるまで表に出てこないときも、それが理由です。 ──あなたの活動は、少しずつファミリービジネスのようになってきていますよね。例えば12歳になる娘さんのブルー(・アイビー)は最近、あなたの創作を興味深く見守る存在から完全にその一員となり、前回のツアーではあなたと並んでダンスを披露するまでになりました。これは好奇の眼差しや、ときには批判も呼び寄せることだと思いますが、ご自身のパブリックな活動にお子さんを参加させることにためらいはありましたか。また、彼女がひとりの表現者として開花していくのを見てどのように感じましたか? 私は仕事のスケジュールを家族に合わせて組んでいます。ツアーはなるべく子どもたちが学校に行っていないときだけにするようにしてね。家族と一緒に世界を見て回り、様々な言語や建築物、ライフスタイルに触れさせるような生活を、私はいつも夢見ていました。 3人の子どもを育てるのは楽ではありません。子どもたちが大きくなればなるほど、独自のニーズ、趣味、社会生活を持つ個人になっていきます。私の双子は神からの授かりもの。子育ては常に自分自身について教えてくれます。たくさんの祈りと忍耐が必要ですが、私はそれが大好きです。地に足がつき、充実を感じさせてくれますから。 子どもたちとはどこへ行くにも一緒です。放課後は私のオフィスに来るし、スタジオにも一緒に入ります。ダンスのリハーサルにもね。私の振り付けを憶えるのは自然なことなのです。 ブルーはひとりの アーティスト です。音楽とファッションのセンスに優れ、素晴らしい編集者であり、画家であり、俳優でもあります。彼女は3歳のときからキャラクターを作ってきました。彼女には天賦の才がありますが、私がブルーを舞台に立たせたのではありません。ブルーが自分で望んだことでした。彼女が真剣に取り組み、勝ち取ったものなのです。そして何より、彼女自身が楽しんでいました! 私たちは毎晩、目の前で彼女がどんどん成長していくのを目にしました。 ──あなたはこれまでにも幾度となく、様々なビジネスへの参入を打診されてきたのではと思います。あなたが胸を躍らされるようなビジネスのアイデアや目的というのは、どのようなものでしょうか? 私がエキサイティングだと思うのは愛、レガシー、それと長く付き合えるもの。自分が作ろうとしているものを私は愛しているか、ということも重要です。レガシーこそが、私が関わってきた全てのビジネスの共通点であることに気づき始めました。 ──起業家の道を真剣に、より確信を持って歩むなかで、自分自身について新たに学んだことはありますか。 誠意に惹かれるということですね。深い情熱を持てないことに、時間を無駄にすることはありません。目が覚めたときに考えているのがそのことでなければ、眠っている間に夢見ているのがそのことでなければ、私がやるべきではないのです。成功とは何かという私の認識は、多くの人のそれと大きく異なります。何かに専念するとき、私はそれに100%注力します。誠意が阻害されてしまわないよう、静かに、それだけに集中したいのです。私が信じているのは、全ては今以上に良くなるということ。私の仕事は、それが可能な限り最高な状態になるまで献身し続けることです。 私をインスパイアするのは、空虚さを埋めるもの、問題を解決するもの、いまだ存在しないもの。そうでなければ、私は興味を引かれません。 私は自分自身に、そして周りの人々にも考え方を変えてみるように促しています。成功の大部分は人生観によるものだと思いますから。失望は全て成長の機会であり、方向転換の機会。私は神を信頼しています。トンネルの先にほとんど光が見えないように感じるときでもね。大地が私のために道を拓いてくれると信じています。 ──ブランドを立ち上げようと決めた後、あなたは曽祖父であるデイヴィス・ホーグ自身が ウイスキー の密造をしていたことを知りました。『ルネッサンス』もまた、家族の一員に捧げられ、部分的にインスパイアされたものでした。ご自身のルーツに目を向けるようになったのはなぜですか。また、ほかに発見したことはありましたか? 面白いことに、そして運命的なことに、私が ウイスキー ブランドを作りたいと考えていたのは曽祖父の話を知る前からでした。自分の歴史を知ることはとても励みになり、モチベーションにもなりました。私たちの ウイスキー のレガシーは200年以上前、1800年代のアラバマ州にいたある黒人男性に遡ります。彼は実業家であり起業家でしたが、当時一般に流通するような ウイスキー を造る機会はなかったでしょう。制度の壁がそれを許しませんでしたからね。しかし、私の曽祖父もその後の下地となる種を蒔いていたことが判明しました。私たちは最も深いところで彼に敬意を表しています。これは単なるビジネスというだけではなく、ひとつのレガシーを完成させるものなのです。 私は、過去、現在、未来は強く結びついていると確信しています。私たちの歴史は、私たちの未来への入り口なのです。私は先祖との繋がりを感じており、彼らが私と家族を導いてくれていると信じています。彼らの導きに、心を開くようにして。アンクル・ジョニー、曽祖父、祖母のアグネス・デレオンの延長線上にいるのが私。彼らが愛したものを、私も愛しています。彼らがそれを愛していたことを知る前からね。 私は、自分がサーデイヴィスに関わっていることが知れ渡る前に、ブランドがその味わいとクラフツマンシップに基づいて認められることを望んでいました。最も厳しい批評家たちに試してもらい、 ウイスキー そのものの力で彼らの敬意を得ることを心に決めたのです。レシピを完成させた後、私たちは ウイスキー をコンペティションに出品し、世界中の批評家たちにテイスティングしてもらいました。ボトルやブランディングに「ビヨンセ」を匂わす痕跡は一切ありません。それはかなり意識的にやりました。 自信を持てるようになるまで、長きにわたる苦労がありました。テストに次ぐテストを経て、サーデイヴィスの最終的なレシピを完成させるのに何年もかかったのです。 私の夢、情熱、技術、恐怖、トラウマ、模範は、全て私の祖先と繋がっています。彼らは私の一部であり、私も彼らの一部なのです。そして私は、家族のレガシーを分かち合えることを光栄に思っています。 ──8枚目のアルバムをリリースしたばかりですが、一歩引いてディスコグラフィーの幅広さを俯瞰したとき、見えてくるものはありますか。また、作品が完成した際に望んでいることは何ですか? 私は自分の成し遂げてきたことを誇りに思っていますが、同時に自分自身と家族に犠牲を強いてきたことも自覚しています。非現実的な納期を守るために自分を追い込んでいた時期もありました。なぜそんなに頑張っているのか、その恩恵を楽しむ時間を取ろうとしませんでした。90年代後半から活動してきた私たちのなかに、メンタルヘルスの重要性を教えられてきた人は多くありません。あの頃の私は限界をほとんど設けず、何にでもイエスと言っていました。その報いは100倍以上になって返ってきました。私は自分が知っている誰よりもハードに働いてきましたが、今の私はより賢く働いています。結局、最大の報酬は個人的な喜びです。私が創り出したものは、人々に自由な発想と不可能を信じる力を与えただろうか? その答えがイエスなら、それこそが贈り物です。 ──2011年のアルバム『4』は意図的にアンチポップ、少なくとも当時のポップミュージックの動きに対して「アンチトレンド」を打ち出していました。振り返ってみると、その後の全てのアルバムであなたが取ってきたアプローチの第一歩のように感じられます。 私がアンチポップだったとは言いません。ポップには敬意がありましたから。でも、当時は誰もがポップやダンスミュージックをやっていて、R&Bやソウルは失われつつありました。ポピュラーで楽しいものでしたが、私向きではなく、当時の私の方向性とも違っていました。もっと音楽性の深いものに憧れていたのです。「1+1」と「Love On Top」は、そんなときに出した曲です。 ──それに関連して、ミュージックビデオの制作から離れるという決断は意図的なものだったのでしょうか。ビジュアル・アルバムの第一人者として完璧を極めたあなたが、『カウボーイ・カーター』や『ルネッサンス』をMVなしでリリースしたのは驚きました。 ビジュアルで溢れかえる時代に、世界が声に耳を澄ますことが重要だと思ったからです。音楽は歴史も演奏も奥深いもの。それを消化し、研究し、理解するには何カ月もかかります。音楽が、それだけで独立していることが重要でした。 ときにビジュアルは、声や音楽の質から注意を逸らしてしまうことがあります。4年以上の努力を注いでアルバムに込めたディテールなのに! 音楽だけで十分です。ビジュアルは世界中のファンが体現しています。ツアーはビジュアルそのものですし、記録映画からさらなるビジュアルを得ることができます。 ──あなたはご自身の活動をアスリートに喩えていますが、どのスポーツのアスリートも年齢を重ねるにつれて、ある種の時計の針を意識せざるを得なくなります。キャリアの終わりについて考えたことはありますか。 私は何十年もの間、自分を極限状態に追い込んできました。ツアーで常に目指してきたのは、お気に入りのアスリートと同じレベルのパフォーマンスを披露すること。クリスタルの刺繍を纏って、ハイヒールを履く以外はね。アハハ! 膝の怪我は、新しい人間へと生まれ変わるチャンスでした。私はポップスターの定型からはずいぶん前に引退しています。何がポピュラーかに目を向けるのをやめ、クオリティにフォーカスするようになりました。時間の経過と経験の蓄積とともに、より良くなっていくようなものをね。いい音楽と力強いメッセージは、決して引退することはありません。 ──現在、音楽や映画であなたにインスピレーションを与えているものは何ですか。2024年に聴いたベストは何ですか? 今いる女性シンガーソングライターは皆好きでリスペクトしています。レイ、ヴィクトリア・モネ、サシャ・キーブル、クロイ&ハリー、それにレネー・ラップも。ドーチやグロリラも好きだし、ヒューストン出身のザット・メキシカン・OTも最近聴きました。彼はハードですね! サブリナ・カーペンターの「Please Please Please」は本当に好きだし、ジー・セイクリッド・ソウルズとチャペル・ローンも才能があって面白いです。私の“後部座席の赤ちゃん”(訳注:マイリー・サイラスのこと)にも夢中……私はスマイラー(訳注:サイラスのファンのこと)ですからね。 でも実際は、ほとんどの場合聴いているのはスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイ、スタックス・レコードの アーティスト などのクラシック。スタックスのドキュメンタリーを観たばかりですが、とても良かった! かなりお薦めです。映画で一番良かったのは『インサイド・ヘッド2』。素晴らしい作品でした。今は『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』と『The Chi』(原題)を観ています。 ──仕事モードでないとき、あるいは仕事が(ちょっとでも)終わったとき、自分のための時間はどのように作っていますか。仕事や家族とはまったく別に、自分だけのためにすることはありますか。 歌うことは私にとって仕事ではありません。私は私のために歌っていますから。私は音楽を、歌うことを愛しています。心の底からの情熱なのです。喉に感じる感覚には魔法があり、共鳴が私を振るわせます。落ち込んでいるとき、悲しみに暮れているとき、重い霧に包まれたとき、病気や不安で眠れない夜が続いているとき、私は歌います。それもしばしば、ひとりでね。 私の声はいつも私と一緒にいてくれました。いつも、ひとりでも幸せでいられたのはそのためです。私が言葉を見つけられないときでも、音楽は私の心を理解してくれる。スタジオや車の中といったプライベートな聖域でこそ、私は安らぎを見出すことができるのです。 歌うことは私を癒やし、鼓動を安定させ、最大のドーパミンを与えてくれる。ピアノの前に座り、指に思いついたコードを弾かせながら、全てを吐き出すことには、ある種の魔法があります。歌は何度も何度も私を癒やしてくれた、私の避難所なのです。 それが私の人生で最も深い喜びのひとつであり、呼吸と同じくらい必要不可欠なもの。歌が、音楽が、創作がなければ、私は歩く屍になっていたでしょう。音楽を創ることは私にとって仕事ではなく、生まれてきた理由なのです。ほかにも、“セクレドの日曜日”といってセルフケアをする日もあります。エッセンシャルオイルを使ってお風呂に入ったりね。鍼灸やカッピング、リフレクソロジーをしたり、子どもたちと一緒にサウンドボウルを演奏したり。ハチミツを作ったり、絵を描いたり、飾り付けをしたり、泳いだり、服や舞台のデザインをしたり。子どものために絵本を書いたり、アニメーションのデザインをしたこともあります。クリエイティブなことは何でも幸せ。趣味で編集もしています。純粋に楽しみのためにね。 お酒は20歳になってから。 From GQ.
COM By Frazier Tharpe Translated and Adapted by Yuzuru Todayama PRODUCTION CREDITS: Photographs by Bryce Anderson Styled by Katie Grand Hair by Kim Kimble for The Only Agency using Cécred Skin by Rokael Lizama at Opus Beauty using Rokael Beauty Manicure by Miho Okawara Tailoring by Timothy White Set design by Ibby Njoya at New School Represents Produced by Alicia Zumback at Camp Productions Special thanks to Shiona Turini, personal stylist to Beyoncé
ジェイ・ズィー / Jay-Z ウイスキー カントリー / Country マイリー・サイラス / Miley・Cyrus アーティスト セレブ セレブリティ Yuzuru Todayama
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