軍隊の「合理化とスマート化、そして実効性を高める」軍事テクノロジー強化のために、メタ、OpenAI、パランティアなどが貢献する現実がやってきた。
メタ・プラットフォームズの最高技術責任者(CTO)アンドリュー・“ボズ”・ボズワースをはじめとする、シリコンバレーの著名な幹部ら4人が陸軍予備軍の特殊分遣隊に任官された──そんな趣旨のツイートを目にしたとき、わたしはその真実性をいぶかった。 2025年のいま、ほかならぬボズワースが属する会社のソーシャルメディアサイトのせいで、真実と風刺を判別するのはいたって難しい。公式のプレスリリースによると、4人はすでに陸軍に、具体的に言うと201分遣隊「エグゼクティブ・イノベーション部隊」に配属されている。ボズはいまや、ボズワース中佐となったのだ。 同時に任官したほかの3人は、OpenAIのプロダクト担当責任者ケヴィン・ウェイル、OpenAIの元リサーチ責任者で、現在はミラ・ムラティの会社Thinking Machines Labの相談役を務めるボブ・マクグルー、パランティア(Palantir)のCTOシャム・サンカーだ。 テクノロジー企業の幹部職にある中年の4人は、迷彩服に身を包んで就任を宣誓。その様子はまるで、カンダハルの陸軍基地から抜け出してきたようだった(米国陸軍参謀総長付き報道顧問のデヴィッド・バトラー大佐は、4人の制服が間に合わなかったためだと語った)。 部隊名の「201」は、HTTPのステータスコードにちなんでいる。プレスリリースによると、この部隊は「軍の合理化とスマート化を図り、実効性を高めることを目指す」全軍的な変革構想の一環だという。 これは、ドナルド・トランプの肝入りなどではない。1年以上も前から進められていた計画であり、国防総省の人材統括責任者であるブリント・パーミターの発案だ。 パーミターは、自身も兵士としての戦闘経験があり、ウォルマートで退役軍人支援の責任者を務めたのち、23年に国防総省に入った。テクノロジー面で未熟な軍関係者をアップデートするために、経験豊富なテクノロジー専門家を軍に招くにはどうすればいいかという構想が以前からあった。 24年の前半、あるカンファレンスでサンカーに出会ったのはそんな折だったという。意図したのは、「マンハッタン計画でオッペンハイマーを巻き込んだような状況」だったとパーミターは話している。企業の上級幹部らが、いまの仕事を続けながら、すぐ任に就けるような状況だ。 ふたりは、サンカー自身のような人材を集める計画を共同で検討した。サンカーは、軍に寄り添いつつある最近のシリコンバレーの傾向を支持する立場を雄弁に表明している。米国は「宣言されていない緊急事態」に置かれており、テクノロジー主導で軍を再編することが必要だと断言するほどだ。 24年10月、予定段階だったこのプログラムについて『The Wall Street Journal』が報じたとき、サンカーは「真っ先に名乗りを上げる」と宣言した。 計画は急速に進み、実際に運用が始まった。自分たちの創造物が殺傷兵器の増強に直結するという事実が、シリコンバレーではもはやタブーではなくなったという変化の表れだった。「10年前にこんなことを言ったら間違いなく炎上していたと思うけれど」とウェイルは前置きしてこう言った。「人々がこの事態を見て『大切なことだ。自由はただではない』と思うような世界のほうがずっといい」 新人士官の4人は、正式に陸軍予備軍の一員となった。一般の予備役軍人と違って、基礎訓練は義務づけられていないが、任官後に軽度の運動訓練と射撃訓練は受ける予定になっている。また、年間およそ120時間のうち一部はリモート勤務が認められており、これはほかの予備役にはない優遇措置だ。 陸軍の話では、戦場に送られることもないという。従って、イランのように交戦の可能性がある地域はもちろん、グリーンランドやロサンゼルス中心部などでも命を危険にさらす懸念はない。4人の任務は、確固たる専門知識を活かして、軍の同輩や上司を指導することであり、その目的は、最新のテクノロジーを駆使して効率化と殺傷能力の向上を図ることにある。 陸軍ならすでに、こうしたパイロットプログラムに必要な人材を徹底的に研究し、公募で人を集めてそこから最適な候補者を選んでいるのではないか。そう考える向きもありそうだが、現実はそうなっていない。 サンカーがほかの士官候補3人の選定に協力し、3人とも合意した。全員が男性だったのは、意図したにせよ偶然にせよ、現在の軍に見られる反DEI(多様性、公平性、包括性)の傾向に合致しているようだ。バトラーによると、「サンカー中佐は、『ぜひ参加したい。一緒に参加してくれそうな人物3人にも心当たりがある』と話していた」という。 ウェイルも、サンカーからの要請を受けて参加したと認めている(パーミターは、あくまでもパイロットプログラムであって成果も未知数なので、公募のかたちをとらなかったのは正解だった、とわたしに語った)。 4人の新任士官が、国家に対する奉仕を純粋に望んでいるのは明らかだ。わたしの古くからの知人でもあるウェイルは、サンカーからこの計画について説明されたときのことをこう回想している。「なんというか、『うん、自分も協力したい。すばらしいアイデアだ』と思った」。 だが、ただでさえ特権的なテックエリートをめぐる不満感が募っている昨今(いまいましいビリオネア連中を描いたテレビドラマ『マウンテンヘッド』はご覧になっただろうか)、裕福なデジタル世界の成功者に対する特別待遇は、世評に対して無神経とも思われる。 大いに疑問に思うのは、サンカーら4人が、はたして(任官されることなく)民間企業としてでも同じような支援に乗り出したかどうかだ。パーミターもバトラーも、企業の最高幹部が直接任命された前例を引き合いに出している。1917年の鉄道会社のトップ、44年のガス電気会社の幹部、そして42年のゼネラルモーターズの社長、いずれも各社トップが任命された。だが、これらはみな、世界大戦中の常勤の職務だった。 すでに予備役の多くがテック業界から参加しており、例えばグーグルには将官が何人かいるということもパーミターは教えてくれたが、いきなり上級士官から軍歴をスタートした人は誰もいなかったのではないだろうか。まして、自宅から務めを果たすといった特例扱いを受けた人はいなかったはずだ。 「防衛デジタルサービス」という別のプログラムでは、テックワーカーが最大2年間の常勤として国防総省に専門知識を提供する機会もある。さらには、パーミターも認めている通り、軍には以前から信任アドバイザープログラムがあり、民間人が非常勤または常勤でプロジェクトに従事できるようになっている。「もちろんそれも継続していて、一定の機能を果たしています。しかし今回は、さらにその先を目指したかったのです」とパーミターは説明する。 陸軍の話によると、今回のように民間から雇用した士官からハイテク部門の助言を求めても、利益相反は起こらないという。陸軍が民間企業とのあいだで交わす契約については、発言権をもたせていないからだ。とはいえ、民間士官から提供される専門知識が、各社のビジネスモデルで中核となる人工知能(AI)や仮想現実(VR)、データマイニングなどと無縁とは考えにくい。 タイミングが重なっただけかもしれないが、ボズワースが任官した前月にメタは、アンドゥリル(Anduril)との契約を発表している。Andurilは、メタを解雇されたパーマー・ラッキーが軍との契約を確保する目的で創業した軍事企業だ。 ボズワースと並んでウェイル中佐が名乗りをあげた前後には、OpenAIが2億ドル(約300億円)規模の軍事契約を交わしたことを発表した。同社も、防空システムの開発を巡ってAndurilと提携している。 サンカーの会社パランティアは、数十億ドル規模の契約を政府とのあいだで交わしており、それには最新のAIシステムに関する陸軍との契約およそ7億5,900万ドル(約1,200億円)も含まれている(マクグルーが相談役を務めるThinking Machines Labは、現在もなかば非公開で活動しているため、軍事契約についての予定は明らかにされていない)。 この4人は確かに個人の資格で任に就いている。だが、各々の会社が内部関係者としてもっている情報から利益を上げており、そうした情報を軍事契約の履行と並行して収集していることは間違いない。 では、4人はどんな役割を果たすのだろうか。 パーミターは、インド太平洋地域の司令官が今後5〜10年間の極東における脅威に対処する手段を模索している、という仮説のシナリオを提示している。そして、201分遣隊に対しては、例えば機械学習とAIの将来的な状況が同地域の安全保障にどう影響するか、といった助言を求められる可能性があると。あるいは、4人の新任士官はもっと戦術的な行動をとり、新しいツールを利用して戦場の状況を理解する過程を兵士に指導するなども考えられるという。 これは一種のコンサルティングのようにも聞こえる。だがウェイルは、現職の士官がもたらす助言のほうが真摯に受け止められるはずだと主張している。「契約関係でも悪いということはありません。ただ、仕事を離れて軍事行動を支援するとなると、同じ制服を着ていること、同じ宣誓を口にしたことが意味をもってきます」 それ以上に深刻な影響が懸念されるのは、二重の責任を負った人物が、各々の会社で政策を決めるときのことだ。メタ、OpenAI、Thinking Machines Labといった企業は、世界に深い影響を及ぼしかねない“超知能”創出の一翼を担っている。 OpenAIは、自社のモデルが他者に害をもたらす目的で使われるのを禁じている企業群のひとつであり、その害には兵器の開発も含まれる。しかるに、米軍の使命はその対極にある。陸軍で務めを果たすとなれば、4人の新任士官は明確に、テクノロジーの殺傷力を上げるという任務を負うことになる。 実際、おりしも25年6月に開かれた上院公聴会で、ダニエル・P・ドリスコル陸軍長官は、201分遣隊も含めた陸軍変革イニシアティブでは殺傷力に貢献しないプログラムを排除していくと回答したばかりだ。 こうした決定を下すとき、4人は誰に対して職務を果たすことになるのだろうか(ウェイルは、自分の職務があくまでも個人の問題であり、殺傷を伴わないAIの用途も軍にはたくさんあるものだと、断固たる口調で言い切っている)。 わたしがこの話を出すとパーミターは、自社におけるAIの将来的な方向性を決めるとき、士官たちの広い視野がプラスになるはずだと答えた。そのうえで改めて、原子爆弾をつくったオッペンハイマーの名を出す。 要するに、サンカー、ボズワース、ウェイル、マクグルーはいまや──批評家からは早くも、金持ちの「テックブロ」が現実のまねごとをしていると揶揄されているにせよ──紛れもない軍人になったということだ。世間の目を考えるならば、彼らは大言壮語を慎んだほうがいいだろう。わたしが話を聞いたとき、ウェイルは謙虚な姿勢を見せた。 だが、サンカーが『The Free Press』に寄稿して自身の動機を説明した巻頭記事は、いささか鼻白むものがある。記事の大半は、民間のテック企業が軍と協力することの利点と、サンカーの家族を巡る印象的な移民の物語(現在のトランプ政権下では起こりようがなかった)に終始していた。ところが、途中から自己顕示に走ってしまった。 「この人たちは誰も、履歴書の水増しを必要としなかった」と、201分遣隊の仲間について書いており、自分自身も暗にそこに含めている。「父親業、過酷な日々の本業、そのほか山のような責務があって、誰も暇な時間などない。それでも全員が、使命に応じるべきと感じたのだ」 失礼を百も承知のうえで言うのだが、4人の献身は、圧倒的大多数の兵士たちが尽くしてきた献身に比べれば最下層に留まるものだと、どうしても考えてしまう。 会話のなかでウェイルは、にわかに上級士官になったことについて、「民間での業績を反映して与えられた地位に過ぎない」と、謙虚な態度を示していた。「この肩書きは、まだちょっと落ち着きません。生涯を捧げて、あるいは命を落として肩書きを獲得した方々がたくさんいるわけですからね。だからこそ、この肩書きにふさわしい仕事をしたいと思っています」 陸軍の仲間たちが、この4人をどう受け止めるのか、わたしにはわからない。だが、彼らより下級の人たちは、兵士として一生を費やし、戦場に臨んできた人も含めて、201分遣隊の中佐の姿を見かけたときには敬礼しなければならない。 バトラーによれば、4人のにわか士官は、その敬礼にきちっと返礼する動作すら身につけていないという。「まだまだ、これからです」 (Originally published on wired.
com, translated by Akira Takahashi/LIBER, edited by Nobuko Igari) ※『WIRED』による軍事的の関連記事はこちら。 アメリカン・ダイナミズムとは何か?──家族と国益のためのイノベーションという新潮流 テック共和国のつくり方[パランティア式]|Book Review 映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』池田純一レビュー(ネタバレあり)
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