カナダで2016年に成立した安楽死法は、難病患者らの「自ら死を選ぶ権利」を求める訴えを受け、最高裁が認めていた。その後、適用者の増加は他国に類を見ないペースで、2023年には全死者数に占める安楽死割合が4.7%に達し、オランダに迫る勢いだ。21年3月の要件緩和で、余命宣告を受けていない慢性疾患の患者や重度の障害のある人らにも適用が認められ、精神疾患患者への適用も決まっている。
カナダ では16年、「死への医療的援助法(MAiD)」が成立。医療行為の一環という位置づけで、難病などで死期が予見でき、肉体的、精神的に耐え難い苦痛がある患者の 安楽死 が可能となった。同国では1990年代以降、何度も 安楽死 を巡る議論が国論を二分してきたが、法制化によって一応の決着を見た。それでも、別れの日は突然訪れた。「一日も早く」という母の強い希望を病院側が受け入れ、同月10日に実施することが急遽決まった。午後8時ごろ、医師が3本ある致死薬の1本目を注入した。「ママ、愛してる」。声をかけると、母は何か言いたげにじっと自分を見つめた後、静かに目を閉じた。 安楽死 した母の満利子さん(左)の思いを尊重したレビーナ・デイビスさん=2005年頃、米国(本人提供)「制度を使うことが正解か不正解かは、苦しんでいる本人にしか分からない」。レビーナは、複雑な思いを抱きながらも、母の面影を追い「 安楽死 という選択肢は、患者の救いになり、尊厳を守ることにもつながる」と強く感じている。21年3月、「死期が予見できる」という実施要件が撤廃され、余命宣告を受けていない慢性疾患の患者や重度の障害がある人らにも適用の道が開かれた。さらに精神疾患患者への適用も決まり、2度にわたって延長されたものの、27年3月には施行される流れとなっている。なし崩しのように対象が拡大する動きには、国内外から懸念の声も上がる。 昨年11月、英下院で、イングランドとウェールズを対象に、余命6カ月未満と診断された患者が 安楽死 を選ぶ権利を認める法案が賛成多数で可決された。同様の法案は10年前に否決されており、世論の変化を物語る。下院で今後行われる2回目の採決、さらに上院でも可決されれば、同法は成立する。 カナダ で 安楽死 を認める連邦法が成立したのは16年。難病患者らが「自ら死を選ぶ権利」を求めて2度にわたり提訴し、最高裁は15年の判決で訴えを認めていた。 その後、適用者の増加は他国に類を見ないペースだ。法制定後、全死者数に占める 安楽死 の割合が3%を超えたのは、 カナダ では5年後。ベルギーの21年後をはるかにしのぐ。 カナダ の23年の比率4・7%は、同年5・4%の先駆オランダに迫る勢いだ。化学物質過敏症にも適用CSは、家庭用洗剤や芳香剤、たばこなど身近な化学物質に接すると頭痛や吐き気などが生じる原因不明の疾患だ。 コロナ禍は、長年症状に苦しんできたソフィアに追い打ちをかけた。彼女が暮らすオンタリオ州でも断続的にロックダウン(都市封鎖)が行われ、州都トロントの自室すら安息の地ではなくなった。アパートに漂う生活臭やたばこの煙で日々体調が悪化。やがて死を望むようになった。 ペリスがソフィアの決意を知ったのは、死の1カ月前。 カナダ では21年3月の 安楽死 要件緩和で、具体的に余命を宣告されていなくても、治療不可能な病状で耐え難い肉体的、精神的苦痛があるソフィアのような患者にも門戸が開かれるようになっていた。 ペリスは行政などに安全な住宅の手配を求めたが、成果は得られなかった。ソフィアの死の直前、ぺリスは電話で別れを惜しみ、ソフィアが亡くなるまで電話はつながったままだった。「彼女の場合、環境さえ改善されれば生きていけたのに」。ペリスのやり切れなさは今も消えない。「倫理的に問題がある事例が相次いでいる」。メモリアル大教授のダリル・プルマン(70)=生命倫理学=は、急拡大に警鐘を鳴らす。トルドーは先月6日、支持率低迷などを受けて首相辞任の意向を表明。今秋までに行われる総選挙で、保守派が政権を奪還する可能性もある。 それでもプルマンは「政権交代しても、一度開いたパンドラの箱はどうなるか」と懐疑的だ。「 カナダ はなし崩しの『滑り坂』に陥っている。市民の命を奪う法律であることを国民は認識し、もっと議論が必要だ」=敬称略(小川恵理子 池田祥子).
カナダでは16年、「死への医療的援助法(MAiD)」が成立。医療行為の一環という位置づけで、難病などで死期が予見でき、肉体的、精神的に耐え難い苦痛がある患者の安楽死が可能となった。同国では1990年代以降、何度も安楽死を巡る議論が国論を二分してきたが、法制化によって一応の決着を見た。それでも、別れの日は突然訪れた。「一日も早く」という母の強い希望を病院側が受け入れ、同月10日に実施することが急遽決まった。午後8時ごろ、医師が3本ある致死薬の1本目を注入した。「ママ、愛してる」。声をかけると、母は何か言いたげにじっと自分を見つめた後、静かに目を閉じた。安楽死した母の満利子さん(左)の思いを尊重したレビーナ・デイビスさん=2005年頃、米国(本人提供)「制度を使うことが正解か不正解かは、苦しんでいる本人にしか分からない」。レビーナは、複雑な思いを抱きながらも、母の面影を追い「安楽死という選択肢は、患者の救いになり、尊厳を守ることにもつながる」と強く感じている。21年3月、「死期が予見できる」という実施要件が撤廃され、余命宣告を受けていない慢性疾患の患者や重度の障害がある人らにも適用の道が開かれた。さらに精神疾患患者への適用も決まり、2度にわたって延長されたものの、27年3月には施行される流れとなっている。なし崩しのように対象が拡大する動きには、国内外から懸念の声も上がる。 昨年11月、英下院で、イングランドとウェールズを対象に、余命6カ月未満と診断された患者が安楽死を選ぶ権利を認める法案が賛成多数で可決された。同様の法案は10年前に否決されており、世論の変化を物語る。下院で今後行われる2回目の採決、さらに上院でも可決されれば、同法は成立する。カナダで安楽死を認める連邦法が成立したのは16年。難病患者らが「自ら死を選ぶ権利」を求めて2度にわたり提訴し、最高裁は15年の判決で訴えを認めていた。 その後、適用者の増加は他国に類を見ないペースだ。法制定後、全死者数に占める安楽死の割合が3%を超えたのは、カナダでは5年後。ベルギーの21年後をはるかにしのぐ。カナダの23年の比率4・7%は、同年5・4%の先駆オランダに迫る勢いだ。化学物質過敏症にも適用CSは、家庭用洗剤や芳香剤、たばこなど身近な化学物質に接すると頭痛や吐き気などが生じる原因不明の疾患だ。 コロナ禍は、長年症状に苦しんできたソフィアに追い打ちをかけた。彼女が暮らすオンタリオ州でも断続的にロックダウン(都市封鎖)が行われ、州都トロントの自室すら安息の地ではなくなった。アパートに漂う生活臭やたばこの煙で日々体調が悪化。やがて死を望むようになった。 ペリスがソフィアの決意を知ったのは、死の1カ月前。カナダでは21年3月の安楽死要件緩和で、具体的に余命を宣告されていなくても、治療不可能な病状で耐え難い肉体的、精神的苦痛があるソフィアのような患者にも門戸が開かれるようになっていた。 ペリスは行政などに安全な住宅の手配を求めたが、成果は得られなかった。ソフィアの死の直前、ぺリスは電話で別れを惜しみ、ソフィアが亡くなるまで電話はつながったままだった。「彼女の場合、環境さえ改善されれば生きていけたのに」。ペリスのやり切れなさは今も消えない。「倫理的に問題がある事例が相次いでいる」。メモリアル大教授のダリル・プルマン(70)=生命倫理学=は、急拡大に警鐘を鳴らす。トルドーは先月6日、支持率低迷などを受けて首相辞任の意向を表明。今秋までに行われる総選挙で、保守派が政権を奪還する可能性もある。 それでもプルマンは「政権交代しても、一度開いたパンドラの箱はどうなるか」と懐疑的だ。「カナダはなし崩しの『滑り坂』に陥っている。市民の命を奪う法律であることを国民は認識し、もっと議論が必要だ」=敬称略(小川恵理子 池田祥子)
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